表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/12

5 やるからにはお遊びでも徹底します

「きゃあああ! クローネ、素敵っ!!」


興奮したルピアがクローネの周りをぴょんぴょんと跳ねる。

クローネは現在――ルピアの着せ替え人形となっていた。


街へ出るとルピアは侯爵家の支援する劇団へクローネを引っ張り込んだ。

そして、クローネは片っ端から舞台衣装を着させられたのだ。……男性用の。


王子様や騎士のほか、砂漠の民だの魔術師だの、ありとあらゆる衣装に身を包むたび、ルピアと劇団員たちに黄色い悲鳴が上がった。

今着ているのは執事服だ。


「あ~ん、このままわたくしの執事にしてしまいたいわぁ……」


うっとりとこちらを見上げるルピアに、クローネの笑顔がひきつった。


「ちょっとルピア……私そろそろ疲れたんだけど……」

「あら、ごめんなさい! お茶にしましょう! さ、こっちへ来て。美味しいチョコレートがあるのよ」

「着替えさせないんかい」

「だってもうしばらく執事のクローネを堪能したいんだもの。……ダメ?」


うるうると上目遣いでお願いされるとクローネは弱い。あざといお嬢様め! 可愛い! などとキュンキュンしつつ、そのままの服装でお茶をいただく。


「はぁ~本当に素敵だわ……。“初恋は虹色に染まる”のアルバート様みたい……」


ぶふっとクローネが紅茶を噴く。

“初恋は虹色に染まる”は女性向けの恋愛小説で、アルバートというのは主人公に愛を囁くヒーローである。執事の身でありながら、実は隣国の第三王子でした~という超人気キャラだった。


「ちょ、わ、私なんかがアルバート様になれるわけないでしょ! 失礼よ!」


クローネも実はアルバートのファンであった。クローネだって恋愛小説大好きっ子なのだ。


「せめてプラチナブロンドのカツラをかぶれば、もう少し似せられるかもしれないけど……」


ポツリと言ったが最後、ルピアの目がギラリと光った。


「誰かっ! プラチナブロンドのカツラを持ってきてちょうだい! どうせなら徹底的にアルバート様に近づけるわよっ!」

「「「「ラジャー!!」」」」


劇団員たちがザザザッと小道具をかき集めてくる。

プラチナブロンドのロングヘアのカツラに、藤色の髪紐、護身用の短剣などなど。


「ああ……! アルバート様……!!」


ルピアがうっとりとアルバート仕様になったクローネを見つめる。

鏡を見て、うむうむと頷いたクローネは、これなら合格点かしらと満足げに微笑んだ。

楽しくなってきたので、ついルピアへアルバートのセリフを再現してしまった。


「……お嬢様。私以外に目を向けたら、お仕置きですよ?」

「「「「「「ぎゃあああああ!!」」」」」


至近距離で推しに囁かれてしまったルピアは、その場でバタンと気絶した。

劇団員たちも、腰砕けになりよろよろと倒れこむ。


「えええええ!? ちょ、ルピアっ!? みなさ~~ん!?」


クローネだけが自分の破壊力を分かっていなかった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ