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第一話 僕と鏡

────僕は鏡を割った。


鏡の破片は宙を舞い、それは美しく、どこか危険な光を放った。


『じゃあね』


僕は呟いた。


『おはよう』


今年で三年目の高校の朝は、三年間変わらず、今日もあいさつの活気で溢れている。


その中で(しずく)は、一人浮いている。


ひょろひょろとした体つきに、鼻は低くく、目は小さい。おまけに顔は吹き出物だらけ。こんな容姿のせいで女子にはキモがられるし、毎日、腹黒いイケメン男子グループにいじめられるわ、もう散々だ。


「はぁ…今日もまた憂鬱なんだろうな…いっそイケメンにでも生まれ変わりたい」


そんな夢みたいなことを下を向きながら考えていた。すると、後ろからこちらに走ってくる足音が聞こえてきた。


霧島『ドーン!!!』


イケメングループの霧島が勢い良く僕に体当たりした。バスケットボール部長の彼の身体はまるで岩のようだった。背中に酷い激痛がはしる。毎日のことだが、今のは、いつもの3倍は痛かった。


『うわっ!!』


僕は勢い良く吹き飛び、醜い吹き出物だらけな顔を廊下に引きずった。うつ伏せで、起き上がれない僕を見て、霧島とその後ろにいたイケメングループのメンバーたちが次々と笑い声をあげた。


イケグル『アハハハハハハハ!!!!』


ひそひそと笑う女子たちの声もきこえる。


僕は、悔しくて悔しくて泣きそうになるのをこらえた。起き上がれないくらいに、体が痛くて体が重たい。


その時だった。


エリカ『コラ!!何やってんの!!』


重たい首を上げた。そこに立っていたのは、幼馴染のエリカだった。エリカは、この学校の生徒会長で、僕とは真逆な性格の幼馴染だった。こういうエリカの正義感が強いところに僕はこっそり好意を抱いている。


イケグル『うわっ!!ボディーガードがきたぞ!』


エリカを見るなり、イケメングループはどこかへ走り去った。


エリカ『アンタは優しすぎるのよ!!もっと怒ったり、親に言ったりしないの!?』


怒るなんてことしたら、あいつらに殴られたり蹴られたりするにきまっているだろ。親に言う?あんなことされてるなんて言ったら、きっとイケメングループを訴えたりするだろう。だが、あいつらの中には政治家の子供だとか、社長息子だとかがいる。そのせいで、先生もPTAもダメ。


“僕の逃げ道なんて死ぬことくらいしかないのだ。”


『エリカ、いつも迷惑かけてごめんね。僕のことは大丈夫だがら。』



<><中休み><>




ここは、理科準備室。僕の至福の部屋だ。


のどが乾いた時は、水道から水を飲めるし、エアコンが付いているため、とても快適だ。だが、一つ大きなデメリットがある。“鏡がある”ということだ。僕は昔から自分の顔を見るのが嫌いだ。何故なら………言わなくてもわかるだろ?だから、僕は端っこのほうで、鏡を見ないようにお気に入りの推理小説を読んで中休みを過ごす。先ほど体当たりされた衝動なのか、とても喉が乾いた。水道の上にある鏡を見ないように、水道の前に立った。少し僕の視界に鏡が入ってしまった。


『ん?』


何かがおかしい。カーテンは閉めているし、電気はつけてはいない。なのに鏡は、暗いところでLEDライトをつけたみたいに、眩しく光っている。僕はすぐに、全ての視界に鏡を入れた。


『うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』


僕はびっくりして腰を抜かした。鏡に映っていたのは僕の醜い顔なんかではなく、不気味な住宅街だった。なんだこれ、何が起こっているんだ!?ここは理科準備室だ、なぜ住宅街が鏡に映るんだ!?頭の中はすでにパンクしていた。いきなりのこと過ぎて情報が整理できない。


???『おや??こっちが見えるのかい??おいで。』


その瞬間。鏡から優しい声がした。それは、催眠術のような声だった。

僕はその声につられて、鏡の中に足を踏み入れた。鏡は波紋をなびかせて、





僕を吸い込んだ。








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