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数字の見えるフットボーラー  〜世界一の選手を目指して〜  作者: シャーロック
第1章 U20ワールド杯カタール大会(95年)編
6/10

⑤U20ワールド杯 inカタール

@ジャシム・ビン・ハマド・スタジアム (対スぺイン戦・デイゲーム)

レオン・龍馬・エドワーズ


 選手入場を控えて通路にイングランド代表が並び始めている。適度な緊張感のある雰囲気の中、反対側にはスペイン代表が整列を始めた。


 今日のフォーメーションは今大会グループステージで多用した4-2-3-1 、俺は左OMFでの先発出場だ。


『今日はよろしく頼むよ。いい試合にしよう』


 通路の向かいに立つスペイン代表RWロドリゲスさん(20歳・トッテナム・能力「82」)が握手を求めて挨拶してくれた。


『こちらこそよろしくお願いします。昨シーズン末にお子さんが生まれたんですよね。おめでとうございます』


 先日の視察役の際、その頭上の「数字」の高さに注意をひかれた俺はその後、一緒に視察したガリアさんなどに聞いて彼を調べた。


 すると、なんと20歳ですでに結婚しており、つい数か月前に第一子が誕生したばかりらしい……サッカーについては、トッテナム生え抜きの選手で、現在はスタメン争い中、少しずつ先発機会を増やしているとのことだ。


『よく知ってるねぇ。奥さんとJr.は今日の試合、TVで見てくれてるはずさ。頑張らないとねぇ』


 そんな会話を交わしていると入場のアンセムが流れ始めた。

いよいよベスト4を懸けたスペイン戦の幕開けだ。


——————

@ジャシム・ビン・ハマド・スタジアム 

フューリー・ゴメス 視点(U20英代表・左CB・背番号【2】・リバプール所属)


 試合開始から10分ほど。スペインは4-3-3(4-1-2-3)のフォーメーションでポゼッションを意識したサッカーを展開してきている。


 ただ、こちら(イングランド代表)は中央の守備が厚く取れるフォーメーションに加えて、両サイドハーフのガリア(右OMF)レオン(左OMF)はボックストゥボックスに優れたプレーヤーのため、サイドに展開されてもSB(サイドバック)と連携してパスコースを潰してプレスで確実にボールを奪っていく。


 今もまた、スペインのRWロドリゲスがパスを貰おうと下がって受けるが中央付近はマンマークによってパスコースがなく、うち(イングランド代表)のLBミケルソンのプレスに怯み、STへ向けて苦し紛れのクロスを上げてくる。


『はい、よっとッ!! 』


 俺はフィジカルとポジショニングを活かして高々とジャンプ。ロドリゲスが放ったクロスをしっかりと奪い、足元に収めると前線を窺った。


 トップ下のポートがセンターライン際まで上がってきている相手のディフェンスラインの裏側へ走り出すのに相手(スペイン)のDFが釣られてできたスペースへ、STクリステンセンが下がってパスを貰おうというというところへ俺はロングフィードを蹴り込んだ。


『ここから速攻じゃぁ!! お前ら走れぇぇいッ!! 』


 俺の声に反応したのかはわからないが、両サイドハーフのガリア(右OMF)レオン(左OMF)も一斉に相手(スペイン)DFラインへ走り出した。


 ボールを受けたクリステンセンは、トラップと同時に、後ろから詰めてきたCB(スペイン)を華麗に交わして前を向くと、サイドを猛然と駆け上がってきたレオンへSB(スペイン)が届かない絶妙な位置へ左脚アウトサイドでの華麗なスルーパスを出した。


『まったく……うちのエース(クリステンセン)はオシャレなパスを出しやがるぜ』


 難なく相手SBより先にボールを触ったレオンはそのままキーパーと一対一に持ち込み、冷静にゴール左隅へボールを流し込んだ。


 イングランドと言えば、「キックアンドラッシュ」と言われるフィジカルコンタクトとロングフィードによるカウンターを体現したお家芸ともいえる先制点が決まり、ジャシム・ビン・ハマド・スタジアムの観客たちの大きな歓声が響き渡る。


『よっしゃー! まずは先制っと……』


 ゴメスは前方でゴールセレブレーションを行うレオンと、そこへ飛びつくクリステンセンら前線の選手を眺めながら、小さくガッツポーズを掲げた。


 ターンオーバーでしばらく休んだため、少しは試合勘が鈍っているかと思ったが、自分を含めたスタメン組の調子は良さそうだとゴメスは思ったのだった。


―――――

レオン・龍馬・エドワーズ (U20英代表・左OMF・背番号【20】)


 試合はその後、ポゼッションで中を崩しきれないスペインが終始攻めあぐねる時間帯が続く。サイドチェンジなどで揺さぶるスペインに対して固く内側を締め決定機を作らせない。


 イングランドは、前半終了間近、パスミスが生じたスペイン左サイドにてサイドハーフに位置取ったガリア(右OMF)さんがボール奪取し、そのままサイドを駆け上がっていく。


 スペインLBは頭上の能力が「73」でガリア(右OMF)さんと比べると実力的には見劣りする。そのミスマッチの穴をガリアさんが一人で突破していく。


 シュート、パス。ガリアさんが様々な選択肢を作れるようにクリステンセンさん、ポートさん、俺がPA(ペナルティエリア)付近へとポジションを目まぐるしく移動する。


 PA(ペナルティーエリア)内へ侵入しようかという位置で一瞬止まったガリアさんは、相手LBを越えていく柔らかいループパスを選択したようだ。


 2列目から走り込んできたポートさんの右脚一閃。強烈なバレーシュートが炸裂した。


 ボールは逆回転がかかっていて、まるで重力などないかのように浮いたままゴール右上隅へ一直線に進む。飛びついたGK(ゴールキーパー)の奮闘虚しく、ボールはそのままゴールネットを激しく揺らした。


 クールにガッツポーズのみのゴールパフォーマンスをするポートさんに、後ろからクリステンセンさんやガリアさんがガッツガッツ叩きまくる。


『おいポートぉ〜もっと喜べよぉ〜。ものすげぇボレーシュート炸裂じゃねぇかぁ〜』

バンバンッ(背中を叩く音)


『や……やめろ……叩くんじゃない……』


『さすがポートさん。パスを選んで正解だったよぉ〜。』


『ガ……ガリアまで……わかったからッ! 嬉しいからッ! 叩くのをやめろーッ! 』


『まったくよぉ。うちの司令塔(ポート)は素直じゃないねぇ。ハハハッ』


 試合は後半もポゼッションではスペイン優位に進むがイングランドは得点を許さなかった。


 試合終了間際、RW(スペイン)ロドリゲスさんの単独突破でスペインは意地の1点を獲得するもそのまま試合終了。


『ピッピッピーッ!! 』(試合終了の笛)


『ふぅ〜〜これでベスト4進出か』


 フルタイム出場とポゼッションで劣る試合展開ということでなかなか疲労の溜まる試合だったなぁ……


『お疲れ様。レオン君。1点目は綺麗な連携プレーだったね。』


ロドリゲスさん(スペインRW)……お疲れ様でした。ロドリゲスさんも最後の突破見事でした。うちのミケルソン(イングランドLB)さんへの股抜きからのゴメス(イングランド左CB)さんをシュートフェイントでかわしてズドン。綺麗な流れでした……』


 1人で展開を打開する突破は見事だった。ウチのディフェンス陣も最後の方は集中の糸が切れていたかもしれないが……


『まぁ、これだけポゼッションで優位なのに1点も取れないんじゃかっこ悪いからね。ハハハッ。できればチームプレー・パスサッカーで勝利したかったよ。うちの十八番(スペインの特徴)だからね』


『精神的にはボールを持たれる時間が長いと疲れます……今回は勝ててよかったです。そうだ! ユニフォーム、交換してくれませんか? 』


『ぜひッ! 未来の代表エース候補のユニフォームは家族が喜ぶよ。またプレミアが開幕したらよろしくね。ウチのチーム(トッテナム)が君を誘ってくれることを祈ってるよ。では……』


 互いにユニフォームを交換した後、ロドリゲスさんは俺と軽く握手してスペインチームの仲間の下へ戻って行った。


『おッ! レオンはロドリゲスのユニフォーム手に入れたのか。スペインのユニフォームはカッケェよなッ。さあッ!さっさと帰って部屋で祝勝会すっぞ! 』


 俺の手にあるユニフォームを見てゴメスさんがニヤつきながら近づいてきた。そんなにすぐには帰れないと思うけどなぁ……


『ゴメスさんお疲れ様です。でも祝勝会の前にきっと監督の反省会ですよ。最後の失点のやつで……』


 そういうと失点に絡んだゴメスさんは苦そうな顰めっ面(しかめっつら)になった。ほんとにこの人はすぐに表情に出ちゃうな……


『それを言わないでくれぇ……わざと考えないようにしてたのに……』


『ま、左サイド(スペインの右サイド)から突破されたやつなんで左サイドハーフ担当してた俺も一緒に反省会出ますよ』


『そうかッ!! 監督お気に入りのレオンがいればなんとかなるかなッ! 』


 俺が反省会に出ると聞いてパッと笑顔に戻るゴメスさん……豪放快楽な性格で好きな先輩なんだが、お調子者でもあるんだよなぁ。


『ハァ……あんまり期待しないでくださいね? LB(レフトバック)のミケルソンさんも連れて早く監督のとこ行きましょ』


『おうよッ!! さすが未来のエースは器がでかいねぇ』


 後ろをついてくるゴメスさんの戯言を聞き流しながらレオンはチームの下に戻るのだった。




本日まとめて投稿されますのでよろしければ最後までどうぞ。

よろしければブックマーク・いいね・評価もよろしくお願い致します。


『数字の見えるフットボーラー(監督編)』共々、ご覧いただければ幸いです。

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