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数字の見えるフットボーラー  〜世界一の選手を目指して〜  作者: シャーロック
第1章 U20ワールド杯カタール大会(95年)編
5/10

④U20ワールド杯 inカタール

@カタール イングランド代表ホテル

レオン・龍馬・エドワーズ


『まずは昨日の試合、ベスト8進出おめでとう。ターンオーバーとはいえスタメン・控え関係なくU20イングランド代表は全員が戦えるということをしっかり示せたことを私は誇りに思う。次の試合は~』


 昨日のナイトゲームを終えホテルに戻って早々に休息をとったU20英チームは、朝から監督による振り返りミーティングを行っている最中だ。


 俺たちの次戦、ベスト4を懸けた戦いの相手は明日開催のスペイン対アメリカの結果次第となる。今日は試合翌日のオフ日なので午前のMTG(ミーティング)が終了次第、自由時間で各々観光なりケアなり好きに過ごすことができる。


『なぁレオンちゃん。昼からの自由時間なにするん? 』


 俺の横に座って、監督の振り返りトーク中だというのに話しかけてくるのは金髪碧眼で長身イケメン兼代表エースのクリステンセンさん。


『U20日本代表の友人とお昼を食べて一緒に市内を少し観光しようかと思ってます。プライマリースクール(日本の小学校にあたる)時代に半年ほど日本へ留学した時の知り合いなんですよ』


 留学といっても母の実家で暮らすというだけで、日本の記憶がある俺には懐かしい気持ちになる半年だったな……


『そっか~レオンちゃんのお母さまの実家はたしかジャパンだっけ。日本も今回ベスト8進出してるよねぇ…面白そうじゃ~ん? せっかくの交流チャンスだし、俺も一緒に行っていいかい? 』


『全然OKですよ! むしろクリステンセンさんが来たら向こうも喜ぶと思います。マンチェスター・Uの若きストライカーには早々会えませんからね』


 イングランドのエースストライカーが一緒に来たら驚くだろうなぁ。よし、サプライズでクリステンセンさんが一緒ってことは黙って連れてこう!


『楽しみだなぁ。マンチェスター・Uにも海外国籍の選手は多いけど、アジア出身の人はいないからね。他国の同世代と話せるのは嬉しいよ。今日会う友人は日本のリーグでプレーしているのかい? 』


『日本ではプレーしてないですね。昨シーズン、ブラジルでプロデビューしています。名前はヒデアキ・ナカムラ(19歳・能力「70」)。日本の高校卒業後、そのままブラジルに単身乗り込んでいて、所属はリオデジャネイロに本拠地を置くフルミネンセFC(ブラジレイロン(ブラジル1部リーグ))のOMFです』


『単身海外で生活するとはすごいね。リスペクトだよ。日本人は身長が大きくないが足が速くて足元の技術が巧みな印象だから、ブラジルサッカーは合うのかもね』


 俺の日本の記憶でも”キング〇ズ”こと三浦〇良選手がブラジルでキャリアスタートをしていたはずだ。


 そう考えるとこの世界線で早期にブラジル武者修行をしている”ヒデ”こと中村 英明はすごい選手になるのだろう……


『彼もそんなタイプかもしれないですね。最後に一緒にプレーしたのは11歳の頃なので今はどうかわからないですが… 』


 クリステンセンさんと午後の自由時間についてその後も話している間に監督の振り返りトークも終わり、ポーターコーチからの今後の予定と連絡事項共有へと議題は移っていった。


『4日後にはベスト4を懸けた試合がスペインまたはアメリカ代表と行われる。おおかたの予想ではスペインだが…。ともかく本日は午後自由だが羽目を外しすぎないようにね。明日からは細かい調整の後、試合前日の午前にはスタメン発表を行うのでそのつもりで。では、解散! 』


『よし自由時間だ!! レオンちゃん、15分後にロビー集合な!』


 そういうと、クリステンセンさんは颯爽とMTG会場を去っていった。


——————

@カタール ドーハ市内某ホテルレストラン

中村 英明 (U20日本代表・19歳・背番号【11】・フルミネンセFC(ブラジレイロン(ブラジル1部リーグ)))


 自分の所属する日本がベスト8へ進んだ日、同じく試合があったイングランドもベスト8へ進んだ。その日の試合には友であるレオン・龍馬・エドワーズは出場しなかったが、ホテルの自室で観たその試合は強烈に印象に残った。


 イングランド代表の2大エース。ストライカーのエンリク・クリステンセン、司令塔のウェイン・ポート。プレミアリーグでも活躍しているこの2人は圧倒的な存在感だった。


 そもそもチームのクオリティが高いイングランド。今大会優勝候補は伊達じゃない……


 日本も次のアルゼンチン戦に勝てば戦うことになる。スタメン組がいなくてもあの爆発力を持ったチームに勝てるのか……


 いやいや。まずは、アルゼンチン戦で勝つことが1番だ…そんなことを考えていると、お店の入り口から懐かしい声が聞こえてきた。


『おーい!! ヒデッ!! 』


『レオッ!! えぇ!? と、となりの方はッ!? 』


 小学生以来に会うレオンの爽やかな笑顔を見た俺は、その隣に立つレオンより少し背の高い金髪碧眼のイケメンに目を引かれた。


『やぁ初めまして。君がナカムラくんかな? 僕はエンリク・クリステンセン。レオンの代表での先輩さッ』


 な、なんでイングランドのエースストライカーがレオンと一緒に!! 一緒に来るなんて一言も言われなかったぞ!!


『は、初めまして。中村 英明です。日本のMFをやってます。今はブラジルのクラブでプレーしてます!!マンチェスター・Uでのクリステンセンさんのプレーはよくテレビで観ています!! 』


 同年代のスター選手を前に俺はガチガチになって自己紹介をした。


『せっかくの同年代なんだ。敬語は使わなくて大丈夫だよ。レオンちゃんといい、将来有望な選手に褒められるのは嬉しいなぁ。レオンから聞いたけどブラジルに単身武者修行してるんだって? すごい勇気だね。リスペクトするよ』


 レオとは小学生以降は定期的にチャットで会話をしている。高校卒業後の進路についても相談して、自分のスタイルに合いそうなブラジルサッカーに進むことを決心したのもレオに相談した結果だ。


『日本が遅れてるとはいいませんが、やはりヨーロッパや南米での経験は貴重ですからね。このU20では僕たち日本はチャレンジャーとして少しでも上位に残ろうと必死です。昨日のイングランドの試合はテレビで観てました。やっぱ優勝候補はすごい……』


『昨日の試合は俺も含めてチームメンバーがけっこうやる気を見せようと張り切ってたからね。所属チームへのアピール、スカウトへのアピール、同じポジションを争う味方へのアピール……理由は違えどその気持ちは勝利への原動力になるからね』


 日本と違いタレント豊富なイングランド代表でスタメンとして試合に出続けるのは大変なことなんだろうな…


『ただ勝ちたいだけじゃない。どう勝つかまで考えられるのがチーム力の高さかもしれないですね』


『そうかもねえ〜。でもうち(イングランド)はあれだけじゃないさ。昨日は控え組がメイン戦力だったからね。レオンちゃんやゴメスといったスタメン組が出場したらもっとやれただろうね…』


『レオンはもうスタメン確保したの?? たしか、年齢が低いから追加招集で昨年のユーロ予選には出場してなかったんだよね』


 昨シーズンのプレミアでは最下位のノッティンガムフォレストで期待の新星としてチームを最年少で牽引していたレオン。

代表チームでも十分通用しそうだが……


『トップ下はポートさんっていう背番号【10】の先輩がいるからやらないけど戦術によっては、中盤でポートさんの相方をやったり左MFをやったりかな。一応スタメン組には入れていると思うよ』


 一応スタメンには入れているってとこにギョッとしたような顔でレオンの顔を見るクリステンセンさんの様子から、またレオンの自分を過小評価する悪い癖が出ていることを察した。


 どうせレオンのことだから実際はスタメン定着は余裕なくらいの実力なんだろう。


『さすがレオだな。小学生の頃からセンスが抜群だったし』


『レオンちゃんは将来有望な若手だよ。きっと今シーズンのプレミアでは厄介な相手として俺とはマッチアップすることになりそうだねぇ』


 そんなこんなでレオンが急に連れてきたクリステンセンさんとも仲良くなれた俺は、2人と共にカタール料理に舌鼓を打ちつつ束の間の休暇を楽しんだのだった。





本日まとめて投稿されますのでよろしければ最後までどうぞ。

『数字の見えるフットボーラー(監督編)』共々、ご覧いただければ幸いです。

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