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働かない男

作者: Hoshi Kaoru

男の妻:そうなんですよ、もう何十年もいっしょにくらしてるんですけど、あの人が仕事するのって一年のうち、たったの一日だけなんですよ!それなのにあの人ったらいつもえらそうに「おれはスペシャルなんだ。世界中だれだっておれのことを知ってるんだぜ。」なんて言うんです。たしかにあの人の言うとおり、世界中の人が知っています。だから働かなくても映画になったり、イベントに呼んでもらったりしてますけどね。

 でもあの人ったらそういうのにちっともきょうみがなくて…。まあきょうみがなくてもいいんですけど、もう少し家族のことをかんがえてもらいたいなって思うんです。

私だってけっこんしたときはほんとうにうれしくて、毎日がスペシャルなんだろうって思ってたんです。でもじっさいは何にもしないあの人のせわをするまいにちでした・・。それでもはじめはよかったんです。あの人が働く日は、世界中がしあわせになる日だから。あの人にしかできないことだからって。でも・・。


インタビュアー:ごしゅじんの仕事がそんけいできなくなったということですか?


男の妻:いいえ。今でもあの人の仕事をそんけいしていますよ。ただ、わたしが言いたいのはそういうことじゃなくて、一日しか働かないくせにえらそうなことを言わないでほしいんですよ。だってそうじゃないですか。みんな毎日仕事をしたり、家族のためにがんばったりしているのに、あの人ったらいつもテレビを見るかケーキを食べるかですよ!家事だっててつだわないし。あの人のほうが私よりずっと長くうちにいるのに。あ、私スーパーでアルバイトしてるんです。毎日あの人といっしょにいるのってたいへんだから。気分転換ね。でもある日、私あの人に言ったんです。「毎日毎日寝るかテレビ見るかケーキ食べるかってどうなの?」って。そしたらあの人なんて言ったと思います?


インタビュアー:そうですねえ‥。『ふつうの日におれが外に出たらイメージがこわれるだろ』とかですか?


男の妻:ふふ。そう言ったんならまだよかったですよ。あの人こう言ったんです。「だってほかのことできねーもん」


インタビュアー:…それは重症ですね…。でもごしゅじんも仕事の前日はたいへんなんだろうなーと思いますが。


男の妻:いえいえとんでもない!あの人がすることなんてこれっぽっちもありませんよ。ぜんぶ私がじゅんびしてるんですから。あのデカブツのエサだってそうだし、服だってそう。ここさいきん毎年サイズがかわってるんで作りなおしてるんですよ。一年に一回しか着ないのに。え?プレゼント?そんなもん今はどこのうちも親が買ってるでしょう。だからうちの人の仕事なんてただ顔見せに行くだけですよ。まあ顔見せって言ってもほんとうに顔を見せるわけにはいかないんで、ちょっとシルエット見せたりするくらいですけどね。でもさいきんはインターネットのおかげですぐにあの人が来たってわかるから、むかしよりたくさんの家に行ってないみたいですよ。きょねんだって行ったと思ったらすぐ帰ってきたんですから。それだって「ああいやだいやだ、なんでこんなさむいときに働かなくちゃいけねえんだろうなー」なんて言ってるんですから。

あ、今年ももしかしたらすぐ帰ってくるかもしれない‥。ねぇ、あの人が帰ってくる前にはこのインタビュー終わりますか?こうやって自由にお話しできるのも、あの人がいない今日一日・・クリスマスだけですからね。

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