悲しき咆哮。
──5分後。部室にて。
「「クラスに友達がいない?」」
俺と二宮は素っ頓狂な声を出してしまう。
「コミュ力高そうなお前がそんなことになるか普通?」
「リクおにーちゃんが相談に乗ってやろう」
「あ、ありがと……」
しかし、更科レベルの女子を女子はともかく男子は放っておくか?
碧眼金髪美少女(巨乳)ってだけで、とんでもなくお声がかかりそうだが……。
「なんでそんなことになってんだよ? 留学から帰ってきたのは10月だったか?」
「そうだね、帰ってきて1年1組に編入したの」
「しかし、それはもう2か月も前の話だろう? 友達の一人や二人、いるのが普通じゃないか?」
「私だって分かんないよ! 友達ってどうやって作るの!?」
「どうやってって……」
「言われてもな……」
学生同士の交友関係なんて気付けば友達になっているのがほとんどだしな……。
「ちなみに、クラスメイトから何て呼ばれてんだよ?」
「更科さん。」
「は? 嘘だろう? もしかしてクラスメイトの言葉遣いは……」
「基本敬語。」
(……おい、もしかして更科って、クラスの人もどう接していいか分かってないんじゃね?)
(……おそらくそうだろう。そもそも存在がイレギュラーだしな)
そういえば入部届を出しに行った時、二宮先生がやけに俺たちがこの部活に入ったことを喜んでいたな……。
あれはもしかして、クラスにいまいち馴染めない更科のことを心配していたのか。
「でも、いつもの元気な感じで接すれば普通に仲良くなれるだろ?」
「そうだぞ。最高の妹だからな」
「なんか、緊張しちゃって固くなっちゃって……逆に想像してみてよ? いきなり出来上がったクラスの中に入っていくの辛くない!?」
「そうか?」
まあ確かにそうなのかもしれない。実際に経験しないと分からないが。
「よしじゃあはい二宮。転入生の自己紹介よろしく」
「オレの名前は二宮陸! 好きなものは妹! 今期の妹推しアニメについて熱い考察を交わそうではないか!」
「た、確かに一部の男の子とはすごい仲良くなれそうだね……」
「な? こんな感じで適当にやっとけばいいんだよ」
「はいじゃあ山市、転入生の自己紹介見せてやれ」
「どうも、山市凛空です。ゲーム好きだから昼休みはみんなでスマヴラやろうぜ! 俺本体持ってくるから誰かコントローラー頼むぞ!」
「確実に隣にいるであろう先生に怒られるだろうけど、みんなから気に入られそう──っていうかこんな自己紹介ほんとは絶対しないよね!? 私のことからかって楽しんでるよね!?」
「何を言う? オレたちはこれを4月の自己紹介でそっくりそのまま言ったんだが?」
「え、これ、ほんとに言ったの!? ほんとに!?」
「そうだぞ?」
唖然とする更科。
「前から思ってたんだけどさ……二人ともメンタル強すぎない?」
「「?」」
◇
「つーか、更科はどんな自己紹介したんだよ?」
「確かに。やってみてくれないか?」
「えー、なんか恥ずかしいなあ」
確か、俺たちと初めて会ったときは、「楽しいことなんでもやりたい!」みたいな感じの自己紹介だった記憶がある。あれはなかなかの好印象だった。
「こほん、えーと──更科さらです。県が支援する留学プログラムで1年間、アメリカのシアトルで学んでいました。今日からこのクラスでみなさんと一緒に勉強させてもらいますので、ひとつよろしくお願いします」
「……硬くね?」
「……だよな」
「だよね!? やっぱそうだよね!? クラスのみんなの反応見た時、失敗したって分かったもん! 私でも分かったもん!! うぅ……」
なるほど。更科も第一印象失敗した勢だったのか……。
俺も鷺宮とのエンカウントは失敗したからな。何となく気持ちは分かる。
気になる方は、
第一印象が大事だと理解した今はきっと第387印象くらいなのでもう取り返せない。
をチェックしよう!
「つまり我が妹は第一印象に失敗した結果、クラスでぼっちに──」
「うわああぁあん!(ガシッ)」
「え?」
更科が俺に抱き着いた。
あまりにも突然のことで──
「ぼっちって言われたぁ! それだけは絶対言っちゃ駄目なのにぃ! ぼっちって……ひっぐ、ひっぐ……」
「「……」」
「い゛い゛も゛ん゛!!」
「「……」」
「別に気にしてなんかないし!! 私には二人がいるがらぁあ!! う゛わ゛あ゛あ゛ん゛!!」
「「…………」」
「うぅ……私の青春が……」
「「…………」」
「何゛か゛言゛え゛よ゛お゛お゛!!!」
「「…………」」
透き通った悲しき咆哮が部室棟に響き渡った。
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