99.~近くの街4
馬車に戻ると、1人の男が車の扉に何かをしようとしていた。
馬車関係者だと思われるだろう身なりをしているせいで、あんなをしていても通行人は止めようとしなかったのだろう。
…可能性としては盗賊か?
「レオ」
「了解しました」
私の掛け声でレオは、取り押さえるために男へと向かい駆けていく。まさか街中で盗賊が現れるとはな。
「一応警戒をしておけ」
「はい」
「分かってるよ」
「ランスは2人から離れないように」
「はい」
私の後ろにいたゼイラルとジャルには、盗賊の仲間がいた場合への警戒を促し、横にいたランスは後ろへと引かせ離れないようにと注意する。
馬車の前ではレオが男を取り押さえていた。
約6~70メートル以内でならば、レオから逃げることは出来ない。取り押さえられているのは当然だな。
ずいぶん暴れている。近づくのは危険か。
「ロシュさん。私がレオさんの援護に向かいますか?」
「君の仕事はランスの騎士だろう。ランスからの指示なしに、そんなことをいうのは、主を見捨てると言っているようなものだ」
「……すみません」
「あの、ロシュさん。ゼイラルは僕の意思を汲んでくれただけなんです」
今の状況での手助けは、危なすぎるため強くいってしまったが、本当に、
「この国に来たばかりの君達は、危険がある場合気を抜くべきじゃない――」
「えっ!」
危険だったのだから仕方ない。
「ぐっ!!」
「「「!!!」」」
私は路地から男の仲間と思われる人物が、こちらの様子を見ていたことに気付き、警戒し様子を窺っていた。
あちらもそうだったようだが、ゼイラルが動いたことにより路地から出ていた身体が、1度見えなくなったことで準備をし襲いかかってくると踏んだ。
だが予測していたよりも出てくるのが遅かったため、タイミングが掴めなかった。だからランス達をしかり緊張感を持って欲しかったのだが、そんな時間はなかった。
少し慌てたが表には出さず、短刀を男の太ももへと当てその場に立ち止まらせることが出来た。
その後、この街の騎士団に男達を引き渡し、無事に家へと帰ることが出来た。明日には男の身元や行動理由が分かるだろう。
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