98.~近くの街3
最後に来たのは、朝食後の予定口上時にランスからの要望である一軒家の家屋に来た。
ここは築20年で売り出し中、古過ぎることもないし一般的だろう。それにこの家は、土地も含めて我がグランツェッタ家が所有権を保持している。
わざわざ総代に許可取りして――などの手間をかけることはない。さすがに住むとなると住民登録が必要だろうが、ランスはあくまでもみたいだけのようだったからな。
「思ったよりも狭いな」
「市民が住むのなら一般的だが?」
「へぇ」
「やっぱりこのくらいが普通なんですか?」
「3人くらいが住むのならこのくらいが普通だぞ?」
「そうなんですね…」
「その反応からするとそちらの国ではもう少し広いのかな?」
「はい」
「ふむ。大地の広さの関係もあるだろうからな。ちなみに値段などは――」
その後しばらくは、国同士での違う点などを論議しあった。中でもやはり1番の違いは魔法があるかないかだった。
我々が『雷』を応用した『電気』を開発し『電気ランプ』『街灯』『冷蔵庫』『冷凍庫』など使っている。現在はまだ数種類しか開発されていないが、他にも何かに使えると研究者達は開発に励んでいる。
しかし、ランス達の国では魔法、魔力を込めた物質で明かりを灯しているらしい。
そしてランスは『電気をこちらの国でも使えれば魔の消費率が減らせるのでは?』と考えたらしく、技術提供を求めてきた。物質を作るにも材料や作業が大変らしい。
「大変なのは言葉から伝わってきた。だが無理な話だ――」
「やっぱり、そうですよね…」
「待てランス。まだ落ち込むな」
「いや、今ロシュさんが無理っていって殿下落ち込んだんだけど?」
落ち込ませる気は無かったのだが、言葉を区切るタイミングが悪かったな。
「無理な話、の前に『私には』をつけ忘れたのと、話は最後まで聞いてくれ」
「すみません」
「…私には無理な話だが、陛下に話せば何とかしてくれるだろう。と言いたかった。さすがに私の一存では技術提供をするとは言えないからな」
「国王陛下に、話だけでもしてみましょうか殿下」
「…ロシュさん。無理な事を言って、すみませんでした」
「気にしてない」
ランスは目を伏せるようにして謝っていたが、私は本当に気にしてはいない。
その後は少し回り道をし、停車してある馬車へと戻っていくことになった。
さすがにもう1度街に出て散策するような日程は、今日を残して無いだろうからな。
明日は王都へ赴くための荷支度に追われるだろうかなら。…イブランが剣術の指導をしなければもう1日あったかもしれない。
が、『騎士』がいる時点で避けられなった事だった。仕方がない。
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起源が雷の電気は風車や水車などに特殊な技術を用いて作られております。
※上記の説明分は、本来の電気の起源とは異っております?あしからずご容赦ください。
電気ランプは、家などの明かりとして使われており、ひねり型スイッチでオンオフが出来ます。
街灯は夜の街を灯す物として使われており、管轄主――総代などの家に設置されたレバー式のスイッチでオンオフが出来ます。
冷蔵庫と冷凍庫は分けられて存在しています。