96.~近くの街1
街まで到着し、馬車から降りるランス達。
「路地まで石畳が敷かれているのだな、この国は」
「王都でもそうでしたが、他の領地までとは思わなかったですね、殿下」
「うん」
3人にまず驚かれたのは、石畳が全面に敷かれていることだった。
そんなに驚かれることではないと思い、近場にいたゼイラルに問うてみた。
「そこまで珍しいのか?」
「えぇ。我が国では王都の街中でしか石畳が使用されていません。王都の外の街では砂利の地面です」
「馬車とかは助かるけどな」
「それは私も分かるぞ?ずっと石畳だったわけではないからな。この地面になったのは4年前だったか?」
ちょうどこの街から敷かせてもらったのだったな。
「5年前ですよ、ロイ様」
馬車の停車をし終えたレオが、訂正の言葉を発してくれた。
もう5年前の事だったのか。
「5年も前でこなんで綺麗なんですか?普通は馬車や荷車で割れたりしませんか?」
「ふむ。君達の国にはコンクリートはあるか?」
「はい」
「我々はその材料を試行錯誤し、割れにくく欠けにくい擬似石を作り上げた。それが石畳に使われている」
『擬似石畳』ではなく『石畳』と言われてもあまり訂正はしないのは、性能としては9パーセントしか誤差がないからだ。さすがに書類などにはきちんと書く。
言葉にするときは、そういう話や聞かれない限りは擬似石とは説明はしない。
…稀に生成の割合を聞かれるからな。職人がまだ熟知していないのに詳しい生成方を教えるわけにはいかない。だが、主な材料は教えても大丈夫だ。
そこからヒントを経て辿り着いてくれれば、その土地にあった物が作れるだろう。
…配分や材質で粘度率がシビアなのだから仕方ないが、あと数年もすれば職人を他の領地や国に派遣し、教えることができるだろう。
「これが…石じゃない?」
「めっちゃ石なのにな」
3人は触ったり、足で蹴ったりとして石との違いがないことにも驚きを示している。
「擬似石の技術は、この国全体にあるんですか?」
「いや。まだ我が領地の職人だけしか会得してないな」
「・・・」
ふ。可愛いな。ランスも。
私は心の中でそう思いながら、言葉を発した。
「残念だが教えられないぞ?」
「え?」
「教えてもらえないかな、という思考が顔に出ていたぞ」
先程可ランスを可愛いと思ったのは、交渉になると途端に顔に考えが浮かんだからだ。
幼いながらに色々と考え、それを悟らせないようにしている。それが崩れ、王太子という肩書きがあってもやはりただの子供だなぁ。
まぁ、悟られてしまってはいるがな。
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