90.警備の動物達
ざわりと木々が揺れる。
「レオ、さん…」
「ゼイラルはロイ様になにか用事でもあったの?」
少し怯えた様子のゼイラルに、レオは淡々と質問をする。
「レオ。そう警戒するな。ゼイラルは私を心配してくれたのだ、女性の夜の独り歩きは危ないと」
年上で、騎士の先輩にもなるレオからの眼光で怯えるゼイラルに、私はフォローを入れた。
「ロイ様は俺と同じくらい強いけどね」
「それは事実だが…」
レオが言いたい事をより詳しく読み取るのなら、『ロイ様(私)が強いから騎士なんてあんまり必要はない』ということ。
戦場という場があったなら、主君も騎士も関係ない。
つまり強ければ、その者の命はある程度保証がされるということを、レオは言いたかったのだ。
数年前に同じようなことを言っていたからな。
「そ、それでも女性は女性でしょうっ!」
ゼイラルはさすがに会ったばかりのレオの思考を読み取ることは出来ないため、強い反発をした。
しかし、ここまで『女性』として扱われるような言動を他者から見るのは、久々だな…。
「…でも。強いし、屋敷から近い。サジリウスさんが見てたから。ロイ様だって外に独り歩きしたいときくらいある」
「それでも近くで主を守るのが騎士の役目では?」
「屋敷近いから役目もそこから出来る」
確かに。
だがレオがここまで言うのには理由がちゃんとあると、私は分かっているが、ゼイラルは違う。
そこで私はレオに視線を向け、切り口を話すように訴えかけた。
「ですから、いくら住まいが近くても――」
どうやら通じたようだな。
何度もアイコンタクトをしたことがあるからこその以心伝心だな。後出来るのはアリエスか古参の使用人達だけだろう。
「それに。ロイ様達を屋敷の周りで襲ったら、こっちが襲われる」
「お、襲われる?」
「ゼイラル。あの木の上にいる鳥が見えるか?」
「…はい」
「あれが襲ってくる」
「えっ」
私が視線を上に向け見せたのは、数十羽はいる鳥の群れ。
科目は様々だが、鳥らの目的はただひとつ。
「何故か代々グランツェッタ家の血を持つ持つ者は、この辺りの動物に好かれるのだ。だからこそ騎士も付けずに夜1人でも出歩け、家の周りには常駐の兵士が必要ない」
伝書も何も残ってないから不気味で仕方ないが、グランツェッタが動物らに守られたということだけは、伝えられている。
…どこか時代の当主が無くしたとも考察されている。
「常駐兵士がいなかったのですか?!」
「あぁ」
「俺達騎士はあくまでも『領』や『管轄』の外に出たときにしか必要にならない」
ゼイラルは驚きに固まっていた。
それもそうだろう。本来、夜間の侵入者を警戒するため、家の周りを警戒する兵士がいるのが普通なのだから。
それにしてもゼイラルは主君でもない者の心配もするのだな。…いや、ゼイラルだけではないか。きっとジャルやランスも同じように心配してきそうだ。
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面だって姿を表しているのは、『鳥達』ですね
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