9.ロシュの異常たる成長期
バルナは説教を終えると、ライラとレイラの願いを2人に言わせた後。私を椅子から離し、執務室から出すと、
「では。おやこの時間をお過ごし下さい」
執務室には戻ってくるなと言わんばかりに、扉の前に立ったまま退こうとしなかった。
「ライラ。レイラ。私の部屋でいいか?」
「「うん」」
私は寝間着に着替え、大きなベッドで待っていたライラとレイラに挟まれるように横になった。
「何かお話をしてくださいませんか?とうさま」
レイラにそう言われ、何を話そうかと悩んだ末に、私の成長期のことを少し話ことにした。
私のような成長を遂げる人はなかなかいないだろうからな。こういう人間もいるのだという勉強になるだろう。
昔からあらゆる成長が早かった私は、ほぼ毎日軋む身体の痛みに耐えた結果、5才にしてすでに身長が130cm近くあった。
3才の頃から始めた勉学は、学舎へと入る前には中等1年生並み、言語能力も同じくそれ位だと家庭教師に言われた。
ただ、1つだけ今も変わらず成長しない部分はあるが、動きやすいのでむしろなくてよかったと思える。
…話を戻そう。
6才の時、初等部に入った私だが、学業生活は計6年で終わってしまった。
6年ある初等部での勉学は、2年で終わりを告げ、学ぶレベルが既に高レベルだったため初等部3年目に入る時に、中等部1年へと編入させられた。
年齢関係なしの編入は時々あり珍しくはないが、私の場合は珍しいがられた。
他のクラスや学年から公爵令嬢が、しかもいまだ10代にもなっていない者が、繰り上げ編入したと聞きつけて見に来たもの達は、私のいるクラスを見渡すと首を傾げる。
仕方ないことだ、私の身長も体格も全てが公爵令嬢とはかけ離れていた。
中等部1年の男子と同じ身長で男子に混ぜれば若干華奢だが髪もショートカットで、そういう男子もいたので目立たず。
中等部1年の女子に混ぜれば、男子が混ざっていると言えるほど違った。
それに加え、学校指定の制服は男子用を着たり、全く成長しない胸部に、女性においては低すぎる声が、公爵令嬢なんて編入してきてなかったのだと、他のクラスから見に来たもの達は去っていった。
クラスメイトは笑いはしなかったが、同情の視線を感じた。
その皆は令嬢とは呼びづらかったようなので、公子―貴族の子という意味で―と呼べばいいと言った。
最初は難色を示していたが、1人が使いだすと皆が徐々に使いだし、私はロイヴァルシュ公爵令嬢からロイヴァルシュ公子と呼ばれるようになった。
他の者に自己紹介するときは面倒だったが。
結果として、初等部2年、中等部1年、高等部3年の計6年で学業を終えたのだ。私は短かったが満足はしている。
ちなみにだが、初等部に入った時からワンピースやドレスはただの1回も着ていないし、口調も女性のようにしたことがあるのは初等部入学前まで。
この服装と口調に関しての許可は、王が許可している。
とあることを成し遂げた報酬として、願いを叶えてくれると言う陛下に、恋愛小説で読んだのを参考にして、当時はまだ女の子らしい声が、頑張れば出せていたのでそれを実行に移したのが、良かったようだ。
そして現在の私は、170cmを越える女性へと成った。
ズボンも履いているし、一目で女性には見えないだろう。
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