82.客人の情話
私が使用人達や知り合いの大人に慰められた話を、全部事細かにする気はない。だから私なりに解釈をして感じたことを言えばいいな。
「感情を揺さぶられている時は、普段通りにされるのが1番楽だった。私には色々と守るものがあったからな。
亡くなった悲しみを感じるよりは、生きるなにかに尽くしている方が気が紛れた。客観的に見る時間があれば、悲しみを押し込めるのではなく、受け入れる事が出来たというわけだ」
だが、客観的になるまでは押し込めているといえるが、『悲しみ』という感情を『押し殺す』訳ではないから、命日などに悲しむ事が出来る。もし押し殺してしまっていたら、他人事のように感じてしまっていたかもしれないな。
「守るもの…」
「私の場合ならライラやレイラ、そして受け継いだ領地だな」
「幼くても、そうされる方がいいでしょうか?」
「幼い?それは……ランスよりということか?」
「……はい」
10才より幼いとは…私と近しい時期に亡くしたか…。
それにしてもランスの表情や雰囲気からするに、相当親しい者らしいな。なら。
「ふむ。出来ればその子の情報がもう少し欲しいところだな」
「嬢ちゃんは6才までで、両親とじぃさんを事故で、ばぁさんを病気で亡くしてる」
同調とまではいかないが、似たような者ならば情報が欲しいと思いランスに話しかけると、ジャルが返答をしてきた。
ランスが言い出しづらいと思っての行動だな。
だが隣のゼイラルに、『個人情報をペラペラとっ!』と小声で咎められていた。ジャルはそれに、普通の声のトーンで『嬢ちゃんの過去を調べた時点で俺らも同じ。それにロシュさんは悪人じゃないだろ?』といい黙らせていた。
私の評価が良いのならもう『女性』であることは受け入れているようだな。ジャルは。
ランスも2人の会話を聞き、どうやらジャルに任せるようだ。
なら一気に話をし終えてしまおう。
悲しみという感情が絡む話は長くするものじゃないからな。
ジャルが『嬢ちゃん』と言っていた彼女の話し合いをようやくすると、ランスが一目惚れした相手なので悲しい事があったときは支えたいから聞いたということだった。
私より若くして両親を失った彼女には弟がいるらしいので、『守るもの』はあるらしい。それに生きるすべは祖母に手解きを受けていたようだから、受け入れる時間もあった。
「ならば私が言ったことも、あながち使えなくはないな。それが彼女に適応するかは分からないが」
「だな」
「そうですね…」
話し合いをしている間に、ジャルとゼイラルも以前と同じように話せるまでに戻った。もちろんランスも。
後半からは恋愛相談を聞いている気分になったが、我々のギクシャクとした雰囲気が戻ったから良しとしよう。
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恋もよう(仮)の子。
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