8.メイド長
ライラとレイラの誕生日パーティーはつつがなく行われ、私からのプレゼントも渡した。
ライラにはサファイアのピアスを、レイラにはルビーのネックレスを渡した。
2人は喜んで受けとると、その場ですぐにつけてくれた。
私の後に続き、使用人からのプレゼントも受けとる2人の笑顔に、私も笑みがこぼれる。
その他に印象的だったのは、私も料理を手伝ったと言ったときのその場のほとんどの者の驚きと、恐怖が見えた顔は面白かった。
そして私は誕生日パーティーが終わるとすぐに執務室にこもった。
23時を過ぎた時刻。執務室のドアがノックされた。
メイドと執事、騎士には非常時以外は4時間おきにしか入るなと言っておいたはず。
「誰だ」
「私です。とうさま」
「俺もいます」
「…入りなさい」
訪ねてきたのは寝間着姿のライラとレイラだった。
「こんな夜中にどうした。早く寝ないと体に悪いぞ」
「その。今日はプレゼント、ありがとうございます、とうさま」
「俺達、凄く嬉しかったです」
「そうか。だが、誕生日のプレゼントには重ねて礼を言う必要はないぞ」
プレゼントを渡した時にも、『おとうさま、ありがとう!』と2人は言っていたのだ。
「……とうさま。私、今日はとうさまと一緒に眠りにつきたいのです」
「……出来れば、俺も一緒に眠りにつきたいです」
「寝寂しい年でもないだろう?」
「「・・・」」
そういうと2人は黙り込んでしまった。
「さぁ。部屋に戻りなさい」
「失礼します。ロシュ様」
「バルナ……どうした?」
2人を執務室にお供したまま、廊下で待っていたのだろうメイド長
――淡い水色の髪に銀色の瞳でメイド服を着ている――
バルナが、部屋に入ってきた。
バルナは聞き耳を立てていたわけではなく、少し扉が開いていた所から聞こえてしまっていたのだろう。
「失礼を承知で発言をさせていただきますが、少しはライラ様とレイラ様とのコミュニケーションをお取りになってください」
「…取っているだろう?」
「今日はまだお2人の誕生日。パーティーが終わるや否や仕事に向かうのはいかがなものかと。お2人はロシュ様とまだお話したいと思っているとは思いませんでしたか?」
「いつでも話せるだろう?」
「はぁ。ロシュ様。あなた様は誕生日を特別とは思っていないかもしれませんが――」
その後。
10分程の間。久々にバルナから説教を食らってしまった。
乳母だったバルナは第2の母のようなもの。怒らせないようと心がけていたのな……
くっ。成人してから怒られることがあろうとは。
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