79.励まし
スロウとサヤンキが食事を並べていくが、客人達から漂う雰囲気が気になったのだろう。
「どうしたんすか?ランス」
ちょうどスロウが追加の料理?を取りに行った隙に、サヤンキがランスに問うた。
私は別にとがめる気はないと分かっての行動だ。
その間、ジャルやゼイラルは考え込むようにしていたが、ランスの会話は聞いているようす。ライラはただ事態を見守っている。
「サヤンキさん…。その、ロシュさんが……」
ランスは口ごもりながらもサヤンキに先程の事を伝えていた。それを私に向かって言ってくれれば良いのにな。
……私はサヤンキより気を許せてはいないということか。
「あぁ!アリエスが言ってたっすね!ロシュ様の性別聞いたんすよね!ビックリしたっすか?ビックリするっすよねぇ~」
「はい……とても」
ランスの声からは、どうすればというニュアンスに聞こえる。
「でも、気にすることないっすよ!性別で関係性が変わるわけじゃないんすから!」
「確かに…」
サヤンキは明るく気にするなと、変わることは微々たるものだという励ましかたをした。
「それにロシュ様が女性として気にしてるのは――」
「サヤンキ。スロウの手伝いをしなくていいのか?」
余計な言葉は喋らなくても良い。という雰囲気を読み取ってくれたのだろう。
「…してきまーす」
サヤンキは大人しくスロウのもとへと向かっていった。
ランスが少し何故かという視線を向けてきたため、客人達にはっきりと言っておく。
「他人から言われるのだけは嫌いでな。先に言っておく。思うだけならいいが口にはしないでくれ。私に胸の膨らみがないことを」
「……そこは気にしてんのかよ」
確かにそういう風に思われても、仕方がないが。
「私は振る舞いなどは男性っぽくありたいが、その他は女性でありたいと思っている」
その後の食事をしている間はここ数日で、いや、まったくといっていいほど無言となった。
……言葉より、書面で説明した方が良かったか?
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