74.どんまい
私達は騎士寮へ向かうために1階に降りてきた。
玄関の広間には、バルナとアリエスがおり、ちょうど話し終わったタイミングだったらしい。
「アリエス、バルナ。少しレオと打ち合いをしてくる」
「かしこまりました。では紅茶ではなく、スポーツドリンクをダイニングにてご用意しておきます」
「あぁ」
アリエスは私に一礼すると、2階に向かっていく。ゼイラルを呼びに行くのだろう。
「ロシュ様。ですがその前に1つ確認したいことがございます」
「なんだ?」
「ゼイラル様との一件をアリエスから聞きました。不意の事故だということも。ですが――」
バルナは最後の部分の言葉を強く発した。
これは……叱られる…のな?何に対してかは見当が今、ついた。
「『背中を流す』という発言をしたそうですね?」
「あぁ……した、な」
「ゼイラル様がロシュ様のご提案を拒否したことで叶わなかったから良かったものの……もし!受け入れていたのなら、男性と2人きりでお風呂に入るという状態になりますよね!」
「あぁ……」
「それをロシュ様はご想像も出来ますよね!いくら男性っぽいからといっても、『ぽい』だけですよね!」
「あぁ……」
「それなのに――」
もうバルナに叱られると分かった時点で反論を諦めた。
私の性格を熟知している彼女が言うことで、勘違いやこちらが意図して隠している場合以外は、間違った事を言った事がない。
体感で約30分から40分バルナに叱られていたと思う。簡潔にいうと前にも言われた、『異性と不用意な密室空間で共に過ごすな』ということだった。
今回は私がその密室に誘い、あまつさえ男性の裸を見る場を作ったがために怒ったというわけだ。
その間レオは、いや、レオもバルナを援護する相づちを打っていたため、私に味方はいなかった……。
「――これからは、常に1人側につけるかの対策をしてくださいね?」
「……分かった」
バルナは洗濯をすると言って、この場から離れていく。
「どんまい」
レオは私の肩に手をおき、言葉をかけてきた。
「今だけはお前がそれをいうな」
誰のせいでっ…………はぁ。レオに怒りを覚えても仕方ない。今回は私がいけないのだ、用心を心がけよう。
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