72.勘違いの謝罪
アリエスに説明し終えたが、いまだにゼイラルがへたりこんだままだ。
「なるほど。では他の方も間違われているかもしれませんね。ライラ様も『おとうさま』と呼んでいますし」
確かに皆、私が女だという言動行動はあまりとっていないな。だが、ランスあたりはライラから聞いていそうだがな…
「確かにな。2人の認識はどうだ?ゼイラル」
「あ…はいっ」
ゼイラルは慌てたように立ち上がり、問いに答えた。
「2人とも強い男性という認識をしています。そう、話してもおりましたし…」
ライラは、ランスの前で私が女という発言をしていなかったようだ。まぁ私の話をしていた場合、女性を思わせる話は出てこないだろうな。
「じゃあ、認識改めさせないと」
ゼイラルの言葉を聞いたレオが、客室のある方へと向かおうとする。それを私は肩を掴み止めた。
「待て。寝ているところを起こしてまでのことではない」
「…でも、ゼイラルみたいなことになる前に訂正しておかないと」
「ひとまずは朝食の時で良いのではないのでしょうか?」
「私もそれでいいと思っていた」
すぐに話し勘違いを無くしたいと思うレオに、アリエスが朝食の時間に話せば良いと言ってくれたため、私もそれに賛同出来た。
「…分かりました」
「ゼイラルもそれでいいか?私の口から謝罪をしたい」
「…はい。大丈夫です」
ふてくされているように見えるレオと、ゼイラルからも同意を取ったのだし、この話は終わりだな。
「ありがとう。そうだ。湯船に入るのだろう?すまないな、こんなことになってしまって」
「あ…」
ゼイラルはそういえばそうだったという顔をしている。自分の目的と、先程のアリエスに説明していたのに忘れていたというのは…それほどまでに衝撃だったのか…。
「では私が準備をして差し上げますので、ロイ様はお部屋にお戻りください」
アリエスが気を使ってくれ、準備を担ってくれるようだ。…少しだけだが、トゲのある言い方に聞こえたのは気のせいだと思いたいな。
「分かった。頼んだ」
「あの――」
「ゼイラル様。準備が整い次第お呼びいたしますので、どうぞお部屋でお待ちください。それとロイ様。後で新しいタオルをお持ちします」
「あぁ、分かった」
アリエスはゼイラルの言葉を遮り、私の首にかけてあったタオルを拾い、風呂へと向かっていった。床に落ちたタオルをで髪を拭くわけにはいかないからな。
「レオはゼイラルの部屋までは付き添ってやれ。昨日イブランの扱きを受けたのだ」
「分かりました」
そう指示すると、レオは納得したような顔となり、ゼイラルを支えるように部屋まで連れていく。
イブランから指導を受けた後遺症の辛さは、この家の使用人ならほとんどが知っているからな。
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明日の投稿時間は18時となりまふ。