59.危険行為をしてまでも見たかったこと
二次元だからこそ
オリオンとのチェスを終えると部屋に戻り、眠りについた。
翌日。私が部屋から出るとバルナがいた。
「おはようございます。ロシュ様」
「あぁ、おはよう」
「今日も素振りをなされるのですか?」
「もちろんだ」
「お客様がいるので、玄関口ではなくダイニングのテラスの方でおやりくださいね」
「確かにそうだな。分かった」
だとしたらダイニングから出るしかないな。
私はダイニングから外に出ると、木刀を持ち素振りを開始する。本当なら本物の剣を振っていたが、ガラスがあるからな。すっぽ抜けても怖い。それならまだ木刀の方がまだガラスにひびは入らないだろう。
小鳥の囀り、風のさざめく音
素振りをする音、服の擦れる音
足底を動かし擦れる音、自分の呼吸音。
今はそれだけが私の耳には聞こえる。精神統一をするには程よい自然音だな。
――カチャ。
「おはようございます」
「ふぅ、おはよう。ゼイラル。早いな」
ダイニングの扉から現れたのは、少し寝癖のついた私服姿?のゼイラルだった。
「それは、ロシュさんにも言えることでしょう」
「確かにな。運動がてら1戦どうだ?」
「ロシュさんの相手にもならないかもしれませんよ」
「ははっ。大丈夫だ。勝敗をつけるものではなく、ただの軽い打ち稽古だ」
「なるほど。では1戦だけ」
「ストレッチをして待っててくれ。もう1本持ってくる」
「はい」
私は自室まで木刀を取りに行く。その時。窓からテラスが見えるので、ゼイラルがストレッチをしている姿も見えた。
ここで少し驚かせたら……という考えが浮かんでしまった。
ジャルは敬語がないが、ゼイラルを外さない。だが、咄嗟の時にはさすがに敬語も外れるだろう。
私はそっと窓を開ける。
そして…
「よっ…!」
『えっ!ちょっ!!』
2階の自室から飛び降りた。
そこそこの高さはあるが、足腰は鍛えているし、子供のころから時々やっていて。最近はやっていなかったが、無事に着地出来た。さすがにライラとレイラには絶対にやるなと言っている。
私は子供の頃頻繁にに木や窓、塀などから降りていたから着地出来ているのであって、見よう見まねでやろうなど大怪我のもとだ。
まぁ、ちゃんと叱られたがな。両親に姉に使用人に……何日も…。だが、ちゃんと誓約書は書いた。『20才からはやめる。それまでに怪我をしても自身の責任である』と。10代が1番動けるからな。それに慣れていない場所や環境になったらやらない。
「な、何をしているんですか!!」
「何をって、2階から飛んできたんだが…」
慌てた様子で駆け寄ってきたゼイラル。
「怪我してからでは遅いんです!やめてください!」
「確かに怪我の危険はあるが…」
「危険という自覚があるならやめてください!」
「そこまで言わなくても」
「ではせめて我々がいる間は、一切やらないでください」
「分かった」
結果として私が悪い。そしてゼイラルが敬語を外してくれる期待をしていたが、彼は口調が強くなるだけで敬語は外れないということが分かった。
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作者からの一言
当たり前ですが?2階から飛び降り着地出来るのは、二次元のみのことだと思っております。
グランツェッタ家の2階からテラス部分までの距離は、約4~6メートル。
現実で飛び降りたら骨折です。絶対。
ですのでロイヴァルッシュが飛び降りの着地が成功したのは、二次元であり、ロイヴァルッシュの運動神経と経験があったからこそ。
二次元と三次元では重力が違うんだね、きっと(・ε・` )