5.領内視察
ライラとレイラの誕生日当日の午前中。
私は街の視察に来ていた。
一応、領民には新領主になった際に、「これでも私は女だが、女性らしくするつもりはない」と区域を担当しているものやなにかしらの主に収まっているものには伝えてある。
最初は年齢も相まって罵詈雑言をしょっちゅう言われたが、1年もするとピタリと落ち着いた。身長も伸びたのが大きいかもしれない。
税や物価の価格を減らせる所は減らし、出荷量を鑑みて基準価格を上げたものもある。
あとは作物の品種改良を提案したりと……色々やったのを思い出す。
「ロシュ様!」
「やぁ、ご婦人」
「ご婦人だなんて、もうそんな年じゃないですよ!あたしゃ!」
ここでいう『ご婦人』は若い人という意味がある。男性の場合は『ご貴人』になる。
「はは、まだまだお若いですよ」
「そうかい?」
「えぇ、そうですよ」
実際この女性は実年齢より10才は若く見える。
「んもぅ!色男に言われちゃ照れるじゃないかっ!」
このご婦人は、私が女性であると知っていてこのように言ってくる。
もし、見知らぬ者なら女であると訂正するが、知っている者から言われるならば訂正はせず受け入れる。
「照れてるお顔も可愛いですよ」
私は別に嘘は言っていない。
私は害意がない人間は皆、好きだ。可愛いや綺麗、格好いいや凛々しいなどはよく使う。
「これ以上褒めるんじゃないよ!暑くてたまらない!」
ご婦人は顔をパタパタとさせている。
今日は比較的涼しいはず……忘れていた。私の顔立ちは素敵と言われる類いのものだった。
最近になって、むすめのレイラに指摘されようやく自覚したばかりで、まだ頭の中に定着しておらず、すぐに忘れてしまう。
「これは失礼、お詫びにご婦人が新しく開いたお店でいつくか買い物をしましょう」
「……何であたしが店を開いたって知ってるんだい?」
疑問は最も。だが、
「私は領主ですよ?把握していて当然ですよ」
「店なんていっぱいあるだろうに…やっぱりロシュ様は天才だねぇ!」
把握はしていますよ、全てね。特に新規で入居する者や店を開く者、商人などは毎日チェックしている。
しかし天才か……。調べた情報と違うな。
「天才ではなく、奇才ではないのですか?」
「…ほんとに何処まで知ってるんだい?」
「どこまででしょうね。さぁ、お店に行きましょうか?ご婦人」
やはり奇才の方だったか。と、納得した私は、ご婦人のお店に行き、役立ちそうなものをいくつか買うと、荷物を従者の騎士に任せ、再び領の視察へと歩き出した。
この時にライラとレイラのプレゼントも買っておく。
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