44.眠りを取れ
翌朝。
「早起きだな、ゼイラル」
「おはようございます。グランツェッタ様」
ランスロット王子の馬車の扉前で立っていたゼイラルに声をかけた。
「ロイ様。ゼイラルは早起きではなく、ジャルと交代して監視をしていたようですので、今が彼の見張る時間なのだと思います」
「そういえばそうだったな。ゼイラル。我々が起きている。少し寝たらどうだ?」
私より少し早く起きていたレオとベガ。アリエスは今日の朝食の支度をしてから寝たようで、まだ寝ている。
その2人がゼイラルに眠りを取るように促している。
「いえ。そういうわけには」
「次は休憩挟むけど、休憩だから。睡眠不足だと困る」
「それにゼイラルは年下なのだから」
「年齢の話までしてたのか」
レオとベガも野営の準備をしている間に友好を深めていたのか。まぁ、私もランスロット王子と年齢の話をしたが。
「えぇ。彼は現在16才です。ジャルも」
「そんなに若かったのか」
「ロイ様もそんなに変わらないのに」
「えっ?グランツェッタ様は、10代なのですか」
「あぁ。今は17才だからな。1つしか変わらないな」
私の年齢を聞いたゼイラルは、
「嘘だ」
驚きで敬語が抜けた。
「老けて見えるだろうが、残念ながら本当さ」
「いえ、そんなことは…」
「ゼイラル。今日の日程を考えると馬車の中で寝ることになる…それだと腰を痛めて騎士なのにすぐに動けなくなる。なら今少しでも寝ていた方が良いんじゃない?」
レオが再度ゼイラルに眠るように促す。ベガも横で「そうした方がいい」と言っている。
確かに馬車の中で眠ると首と腰が痛くなる。そのまま急に動けば筋をやることも考えられる。盗賊などが100%襲ってくるわけではないが、警戒は必要でいつでも動けるようにしておいてもらわなければ。
私はともかく、ランスロット王子が襲われて傷がついたら他の貴族に生誕祭でぐちぐちと言われそうだな……
「…分かりました。休ませていただきます」
「その間の警戒はこっちでやるから」
「はい」
「我々の使っていたテントを使うといい!」
「ありがとうございます」
ゼイラルは私達の言葉に従ってくれ、レオとベガが使っていたテントに大人しく入ってくれた。
「それじゃあ、私は」
「素振りはうるさいからあっちの方でやろ、ロイ様」
「では私はあちらを見張っています」
テントに音が届かない範囲で私とレオは素振りを始めた。本当ならレオかベガとで手合わせをするつもりだったのだかな。仕方ない。
遠くはないので反対側でベガは警備を勤めてくれた。
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