41.では向かおうか
レオに異国の王子が来ることになった顛末を話した。
聞き終えたレオの感想は、
「ロイ様は子供に甘い」
だった。確かに否定は出来ん。
子供は政治的な話をしないから楽なのだから、甘くなるのは仕方がない。
レオに話をしていた間にアリエスも合流しており、後はランスロット王子を待つのみとなった。
「ロイ様。馬車の中でお待ちにならないのですか?」
半歩後ろの位置からアリエスがたずねてきた。
「私が提案したことだ。中で黙って待つのはどうもな…」
「ロイ様はやはりお優しいのですね!」
私の提案で急いで準備をしているランスロット王子を、馬車の中から高みの見物のようにして待つのは私は好きではない。
さすがに寒かったら中で待たせてもらうが。
そんな私にベガは恥ずかしげもなく『優しい』と言ってくれる。普通は心の中にとどめるものだがな。
「面と言われると照れる」
「!。では、お手紙でこの想いをお伝えします!」
手紙か。
「ふ。それは面白いな。ぜひ送ってくれて」
「はっ!」
「では私もお送りします」
「俺も」
「あぁ」
ベガに便乗するようにアリエスとレオも私に向けた手紙を送ってくれるらしいので、楽しみに待つとしよう。
――18分後。
馬車の馬にまたがって来たジャルの姿が見えた。どうやら準備は出来たようだ。
私達を側まできた馬車のドアが開き、ランスロット王子が出てきた。馬車の中からはゼイラルも出てくる。
さすがに馬を何体もすぐには借りられなかったようだ。
通常は馬車で出掛けるとなると、1人以上は馬に騎士がまたがって、馬車の警護をしつつ走らせる。
馬車の中に騎士やメイドを置くのはその人次第だ。
「お待たせしました。ロイヴァルッシュさん」
「急がせたようですまないね。それじゃあ、向かおうか」
来たからには出発をしようと馬車に向かおうとするが、「あの!」とゼイラルに声をかけられた。
「グランツェッタ様。走行ルートは…」
「それに関してはこちらが先頭を走るので付いてきてください」
「分かりました。泊まる場所などもお任せしてよろしいということですか?」
「もちろんです」
ゼイラルの質問にはベガが代わりに答えた。今日馬車を引くのはベガのようだな。
「ベガ。頼んだぞ」
「はっ!お任せを!」
私達は馬車に乗り込み、レオは馬にまたがり、ベガは馬車の馬の手綱を握り、私達はランスロット王子を引き連れ王城から出発し、グランツェッタ領へと向かう。
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