4.貴族の中の例外
ライラとレイラには同情するが、婚約を断るのだからせめて返事は早い方がいい。
「確かに最悪だが、待たすわけにはいかない。諦めなさい」
「とうさま!せめてあと2日伸ばせませんこと!」
「1日だけでもいいのです!」
なぜそんなにも必死に……。
あ。
しまったっ!忘れていた!
「「お願いします!!」」
「・・・仕方ない。作法の指導ということで、数日伸ばしてもらうとして、出発は少し伸ばそう」
3日後はライラとレイラの誕生日だった事を思い出した。
疲れですぐに思い出せなかったのだろうか?
……ともかく2人が怒ったのは、誕生日に行きたくない場所へと行くのが嫌だったんだろう。
「「やった!」」
「だが今と先程、当主たる私との会話で少し言葉の崩れがあった。朝食を食べたら夕食までは勉強と作法をみっちりと入れる」
「にゃ!」「むっ!」
なんだと!の声を上げた2人。勉強嫌いにはいい罰だろう。
ちなみに『にゃ!』と言ったのがライラで、『むっ!』と言ったのがレイラである。
ライラの『にゃ!』はまだ良いとして、だ。レイラはなぜ『むっ!』になったのかが不思議でならない。
「ライラ、レイラ。日数を伸ばすのを、やめたほうがいいだろうか?」
「やめないでいただきたい!」「やめないでくださいまし!」
「次からは気をつけるように」
否定が早い。あたりまえか。
「はい!」「わかりましたわ!」
「よろしい。では、久々に私が稽古をつけようか、ライラ、レイラ」
「はい!とうさま!」「はい!!とうさん!」
笑顔で答える2人。親子の触れ合いは大事だからな。
私はおとうさまというあのよそよそしい感じが、好きではない。
私はずっと敬語とかはなくてもいいんだが、昔から公爵家にいるメイド長のバルナに子供の時から散々仕込まれた。
私の父さんが当主として話をしているときも、私はほぼタメ語だった。
だから、ライラとレイラにはちゃんとしておいて欲しいとは思うが...その辺りはバルナがやってくれるだろう。
私のようになっては可哀想そうだしな。
さて、手紙の残りだが、12通はライラとレイラに、6通は領に関しての賛否。
残り1通は私への婚約者候補の手紙だった。
それもノアール王子と同じ王族から。
何故私達グランツェッタ家ばかりに来るんだと思う。
このグランツェッタ領とは昔、この国の第1王位継承者の座を捨て、弟に丸投げした初代が受け持った土地。
良い妻や子、孫達を思った初代は、未来を見据えて当時の王であり父に願い出た。
『我が一族が国に仕える限り、結婚相手の自由を保証してもらう』
というもの。
子供思いだった王はそれを受諾し、その時に誓約書も作成されておりそれが両家から破棄されない限りは、有効。
グランツェッタ一族は爵位を持つ家では異端となり、政略結婚をせずとも良い例外の家となった。
私の母もグランツェッタに仕えていたメイドだった。
本来なら他の爵位持ち達から非難をされるが、我が一族に許されたあれがあるため、特に波風は立たなかった。
それに代々国にはちゃんと生産活動で貢献している。
私も国に貢献する気はあるが、あくまでも『生産』でだ。
成人の15才を過ぎているので、王城へとレイラを届けたときにキッパリと断ろう。
王家の政治に直接巻き込まれるのはごめんだ。
王家の子供なんて作る羽目になるのは、絶対に嫌だ。権力争いなど怖い。
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