39.叶えよう。出来ることならば。
国の一部重鎮達を招いた第1王子の生誕祭が今月末に開催される。
それに向けて、領主や一部貴族は仕事を溜めないようにしなければならない。
溜めたら後が辛い。一昨年行った時にそうだった。3徹はしたな……。
皆にも色々と領地内を回ってもらい、町長らに指示出しを代わりにしてもらったりもした。
領民に過度な迷惑をかけることはなかったが、使用人達には迷惑をかけた……。
それを愚痴1つ言わずやってのけ、私に何の文句も言わない使用人達がいて、私は恵まれているな。
「ランスロット王太子殿下は、生誕祭までこの城に在住を?」
「その後も少しだけいる予定です」
この王城には何部屋か来客用の部屋がある。ランスロット王子はそこに泊まっているのだろう。
レイラも来客ではあるが、場合によっては王族になるため、側妃や王子、王女などが住まう離宮の方に泊まることになっているため、厳重な警戒が必要だ。言葉には出せないが、一部の王子王女は陰湿だからな…
「あの」
「ん?」
「不躾ですが、私のお願いを聞いていただけませんか?」
願いをか……。子供の願いを叶えたいと思うが、時間もない。
「手短に話してくれるのなら、内容次第で叶えよう」
「……ロイヴァルッシュさんの領地を見学させてもらえませんか?」
「見学?」
見学か。領地に帰っても家で仕事しかない。どこかに案内するのは出来ないぞ……。
「国王陛下には生誕祭までこの国を自由に旅してもらって構わないと言われています。そこで、もし、よろしければ」
「・・・」
陛下は異国者でも接し方は変わらないのか……。
異国に知られ見られてはいけないものなどは我が領地にはない。それに、ランスロット王子からは何かを学ぼうという意思を感じる。
それなら受け入れる価値はあるか。
「ランスロット王太子殿下。今から20分以内に馬車1台と荷支度が出来るのなら、その願いを叶えますよ。正門近くの停留所でお待ちしてますので」
唖然とするランスロット王子達を置いて、私はベガを連れ停留所へと、向かった。
さすがに何の苦労もなく願いを叶えるのは甘過ぎる。試練擬きではあるが越えてもらわねば。
例え異国の王太子であろうと、楽する王太子は国のためにならん。
ちなみにアリエスは、応接間の使用が終わったことを侍女長に伝えてから合流する。
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使用人とは。
メイド、騎士など屋敷に使えてくれている者を、大雑把に言った時の名称。
(小説内で)