37.魔法への恐怖
3人に淹れた紅茶に毒は入っていないとは言ったが、人は選ぶ。
さて。グランツェッタと知っており関わりを持とうとするのなら、恒例行事を受けてもらう。
これで大抵どういう人間か分かる。
「ぐぇ」
「うぐっ」
「どうした!?」
最初に反応を示したのはジャル。次にゼイラル。そしてランスロット王子は驚きを見せている。
「あ、あんた!これっ!」
「殿下!なんともないですか?!」
「どうした!2人とも!」
ジャルは私に怒りを向けた。感情豊かで嘘があまり得意ではないな。
ゼイラルはランスロット王子を心配した。自分よりも他を優先し、歪んだ顔を隠した。回りを見ているな。
ランスロット王子はただただ戸惑っていたが、私が何かをしたとは考え至れたようで、少し睨むようにして私に話しかけた。
「ロイヴァルッシュさん。2人になにを?」
「いや。すまないな。ちょっとした見極めだ」
「見極め?」
この国に来たからこそだな。
「あぁ。この紅茶はうちで栽培しているものでね。身体が成熟していると、その人物が1番感じたくない味になるものなんだ。
飲んで怒りを向け、相手が誰かも分からずに剣を抜くおろかものだった場合、交渉するまでもなくお帰りいただく。苦味を耐えれば上下関係を理解している者として、話に応じる」
「でもそれを初対面でやるのは…」
「異国からの来訪者で1番怖いのは、騎士だ」
「俺らが怖い?」
「ペストリータ大陸には『魔法』があるだろう?この国にはない。異国からの来訪者には初対面でも、その者の騎士や連れがどういうものかを話したり、アクシデントを起こして顔色を窺う。この国の貴族は『魔法』には恐怖しか感じていないからな。ここでは使えないが、話さないことを勧めるよ、ランスロット王太子殿下」
ペストリータから離れれば、魔力供給が大幅遅れる。
ただ大量に保持していれば、数週間は問題なく魔法を使えると、書物で読んだことがある。ただ、その書物の内容を信じる人間が多くはいないのが現状だ。
「もしかしてロイヴァルッシュさんはそれを教えてくれるために?」
「あぁ。あなたが言っただろう?『この国のことについて教えてはほしい』と。ただ、今の行為は話だけでは感じ方が薄いと思ってな。実践経験もしなければな」
「それで俺達は」
「経験したわけだ。王太子殿下にはこんなことは仕掛けられないからな。そこは安心していい」
傷を付けたり命を奪うまではしない。ギリギリ言い訳が通るラインで攻めてくる。
「あぁ。それとその紅茶に角砂糖を1つ入れれば2人も普通に飲めるぞ」
アリエスはテーブルの上に角砂糖の入った容器を置いた。2人は疑心暗鬼ぎみだったが入れて飲むと、
「うま」
「美味しい」
と。言ってくれたので私もしても嬉しい。不味いだけで終わりにしてほしくはないからな。
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『恋もよう(仮)』ランスロット、ジャル、ゼイラル3人は登場している。