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368.転じて変わる思考と機会


あれから数ヶ月。


ゼイラルは週に2度、講義を受けるため執事寮へと足を運び続けていた。


最初はグランツェッタ家でやらせていたのだが、『1人前になるのにロシュ様がいては…』と指導者のサジリウスから小言をもらってから場所を移したのだ。


ダイニングを使用して講義を受けているゼイラルに、ほんの少し助言をしただけで小言を言われるとは思わなかったが。

それは私にとっての最善で、ゼイラルにはそうではないのだと講義の続きを見て分かったため、グランツェッタ家でやるよりは、まだ執事寮の方が練習には良いだろうと、移させた。



――ロシュは間違えぬように真剣に復習等をしているゼイラルに、『緊張感を毎度もって挑めば緊張など感じなくなり、失敗も減るだろう』と助言のつもりで言葉をかけた。


だが、ゼイラルにとってそれは苦行でしかなかった。

緊張を毎度ということは自主的に生み出すことだが、普通の者が

やるのは難しいことだ。

むしろ脳や精神により負荷をかけて、緊張ではなく畏怖へと変化する恐れもあった。


ロシュは緊張した場面などを思い出し、練習も本番を思い描いて出来るが、ロシュは普通の精神力をしていないからこそでき、それが本番での失敗を少なくさせている。

それに気がついたのは、その助言をやろうとしていたゼイラルを見ての事だった。


ゼイラルは自分の記憶から緊張した記憶を思いだした。その気持ちのまま、その時行っていたテーブルマナーを開始したのだが、無駄な音をカチカチと鳴らし、飲み物を危うくこぼしかけたりと、合格点は与えられない結果を出してしまった。


緊張は過度に感じれば、恐怖や畏怖へと変貌を遂げることもあるのだ。






ゼイラルが学んでいる間にも、婚約も周知されつつあった。

大きな問題は起きなかったが、祝福の手紙と共に相手の、ゼイラルの素性の提示を願われた。

しかし、王都のしかるべき所にはゼイラルの直筆で、自身の事についてできうる限りの履歴を書いてもらった。

交流深い者達にも『異国の元貴族の御仁』とだけしか書かなかったのが、裏目に出た。


大体の手紙が似たようなものだったため、ゼイラルに確認をとり、『王都に招かれた異国の王族の元騎士を勤めていた御仁。こちらに来る際、貴族としての爵位も返上してきた御仁』と書き再度手紙を送った。

それでもより詳しくと言ってきた者達には、『ゼイラルから弱点を見いだしグランツェッタ家に泥を塗る事が目的か?』と遠回しの警告文の手紙を最後に送った。

返事を求めてはいないからな。やり取りは強制的に打ち切った。


まぁ、ここいうやり取りのおかげでお披露目パーティーに招待する者をふるい落とせたのだから、最終的にはありがたくはあったがな。




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次回更新は12月10日朝9時頃です。



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