356.危惧からくる一抹の
レオとの話は無事に終わり、彼は部屋の外へと待機しに去っていった。
「ふぅ……」
ひとまず、自分の専属使用人達には自ら話ができた。
他の者達も明日以降には、長達から知らされることになるだろう。
だが厳選したせいで内密度が上がってしまった。
そうなると、話さなかった者達に結果を話す際、色々と詰め寄られる可能性が高い。
特にクエリア。
彼女に話すかどうかは最後まで割れた。
話しておいた方が後々楽だという意見や、話したら全員に話が伝わるような者だという意見がでた。
楽と拡散。
言い方は悪いがどちらが1番誰かの迷惑になるかと考えた時、楽になるのは一瞬、ゼイラルとのうんぬんが結果がないまま広まる方が、迷惑だという結論に至った。
それから私は睡魔に呑まれるまで、周りの人間関係について思考し続けた。
――翌日。
いつも通りに仕事に付いたアリエスは、数時間で自室へと戻っていった。
彼女はこちらが危惧していた通り、『不機嫌です』という態度が端々に現れており、バルナを呼ばせると、すぐに状況を理解したバルナは、彼女に仕事を休ませた。
「まさか、現実になるとはな…」
「ですが初日に分かって良かったのでは?」
「確かに最初だけ取り繕われてるよりはいいな」
「アリエスの精神安定はこちらで行いますので、結果をお待ち下さい」
「分かった。…ただ辞めるようなとこだけにはさせるなよ」
――ロシュは少し弱気になっていた。
アリエスがロシュの結婚が濃厚だという事を聞いただけで、仕事が疎かになり辞める、なんてことはないと分かっていた。
だが、身内に近い彼女が『いなくなるのでは?』という一抹の不安が今、膨れ上がり弱気になってしまったわけである。
「ロシュ様。アリエスはそこまで弱くはありません。理解し、落ち着くことができれば、また貴女様に仕えるでしょう」
――ただそれはバルナの一言ですぐになりをひそめた。
僅かな不安だったため、肯定的な言葉をかけられれば晴れる不安だったのだ。
それに元々、ロシュは不安になってもある程度は自分で解決してしまう。
今回は『アリエス』だったから、不安を言葉に出してしまったのだろう。
「フッ。そうだな。なら私は自分のことと、仕事に集中しよう」
――気が晴れたロシュはそれからアリエスの代わりにバルナを控えさせ、仕事に集中して日常を過ごしたのだった。
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次回更新は木曜日朝の9時となります。