355.平常心と乱れぬ心
おはようございます
――ゼイラルに対しての全てを聞き終えたアリエスは、ロシュに自身の感情を押し殺し、『全てはロイ様の想いのままに』と言葉を発した。
聞き始めの取り乱しがなかったかのように淡々と答えるアリエスだが、ロシュの気持ちが本物だと分かった以上、仕える自分は主人を思い、それを受け入れるしかない。が。
すんなりと受け入れられるほど、冷静ではないと自身でも分かっていた。
だからこそ、自分はこれ以上ロシュとの対話をしていても、意味はないと判断し、対話を切るような言葉をかけたのだ。
「ロイ様。レオにはお話になられるのですか?」
「…そうだな。話すつもりだ」
居心地が悪くなるのを避けようとしてくれてるのか…。
「では今から呼び入れますか?」
「あぁ。頼む」
――ぎこちない応対になる前に、アリエスは外で待機しているレオと入れ替わるように出ていった。
ロシュは彼女の行動をある程度理解した上で、何も聞かずに流された。
アリエスと代わって入ってきたレオにも、私はアリエスと同じように語った。
1度話したからか先程よりはスムーズに語れた。
「そっか」
――ただしレオはロシュが考えていた通りの反応を示した。
「やはり素っ気ないな」
「そんな気はしてたから」
そんな気はしてた…か。
「レオ。1つ聞くが、ゼイラルと2人きりにしたのはわざとか?」
「うん」
何の躊躇いもなくそうだと言われて私は呆れるしかなかった。
「何故、2人きりにしようと思った?」
「何か進展があるかなって思って」
「進展を望んでいたのか…」
「うん。ロイ様がゼイラルを異性として見て恋愛する、もしくはゼイラルが告白して玉砕。の、どっちかに早くなってほしかった」
玉砕は進展というより結末だろう…。
「レオには、そんなにじれったく見えたのか」
「前までのロイ様なら様子見なんてしなかった。だからもう、答えはあるんだろうなって思った」
「なるほどな…」
レオも良く見ているな。
「でもアリエスは気がつかなかったんだね」
「そう、みたいだな。もし気がついていたら、両思いの方を最悪と考えて行動していただろうな」
私に男を近寄らせるのすら煙たがっていたからな。
「もしくはロイ様が隠すの上手くなったとか?」
「ははっ。それならレオに隠せてないのは可笑しいだろう?」
「ロイ様は態度とかが男っぽいから――」
「だから自分は気がつけたと?」
――ロシュは別にレオの言葉に被せるつもりはなかったが、同性にだけ隠し事が上手くなったと言われ、悲しさで少々不機嫌になってしまったのだ。
「多分……ロイ様。俺、何でって聞かれても分からないから、聞かないでほしかった」
「聞いたつもりはなかったんだかな」
「問われてる気がした」
「それはすまないな」
――レオはただ、隠し事をするときは態度から隠すことから、ロイがアリエスに隠せたのだとしたら、態度なのでは?という1つの回答をしようとしただけだったのだ。
ロシュのいらぬ早とちりのせいで、レオは危うくロシュから不満をぶつけられるところであった。
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