352.伝える者、伝えない者。
最後にイブランからでたゼイラルに関わる対応の意見は、他の使用人にも、この事実を合否がどうあれ伝えるべきだというものだった。
「私もそれを考えてはいた。だがそれが『ゼイラルに受け入れられる前提』で進められると、私より落ち込むだろう?」
「…未成年達とシリウスですね」
「あぁ。年頃の子達は恋愛事にはしゃぐだろうし、シリウスは落ち込むというよりは、なぜロシュ様を――とゼイラルへ詰め寄りそうだ。ならば良い結果になった時だけ伝えようかと思ったのだ」
――この国では、15歳の誕生日を迎えた次の日から成人扱いとなる。
「なるほど確かに」
それからバルナとサジリウスも話に参加してもらい、使用人の誰にだけ伝えるべきかを話し合った。
まずは未成年達――ライラ、レイラ、ジェミナ、ジェミネ、アルタ、プロキノ――とシリウスには伝えないことは、全員同意した。
次に料理人組のスロウとサヤンキ。
彼らは話の最中での不意打ちに弱い傾向があるため、勘の良い者に詰め寄られたら口を滑らせると判断され、伝えないことが決定した。
次に庭師のスピオン。
彼は何かを隠しているとは思われるだろうが、口を割ったり悟らせることはしないだろうということで、伝えることになった――
それから騎士達、執事達、メイド達の誰に伝えるか否かが決定した。
伝える者の中にはもちろんだがアリエスも含まれていた。
ただ私としては不安しかなかったため、決定した後だったが対策案を求めた。
「アリエスに話しても大丈夫だと本当に思うか?」
「彼女はいくら動揺しても仕事は全うすると思いますが?」
「不機嫌そうにな」
「…」
サジリウスは私の指摘に思うところがあったのだろう。口を閉ざした。
「ロシュ様の不安はそこですか?」
「専属なのだぞ?ほぼいつも側にいるのだ。変に遠ざける訳にはいかないし、ずっと不機嫌そうにされては空気が悪い」
まるで不機嫌なくらい良いじゃないかと言ってきたイブランに、『専属』や『側』といった言葉の一部を、少し強調するように発した。
「あーすいません」
――『不機嫌なくらい』なんていうのは軽率だったなとイブランは、軽く謝罪した。
ロシュにとっては『くらい』で済まないのだと理解したからだった。
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