345.仕える者
ゼイラルの意思の強さを見たのち、宣言通り料理を作り始めた。
最初の段階からアリエスはゼイラルにこの食材はどこで?と、仕入れた場所を聞いていた。
それに彼は丁寧にハキハキと答えつつ、準備を進めていた。
その間、暇をしていた私とレオは促されたテーブル前にある椅子へと腰かけていた。
「ロイ様」
私もレオも特にすることがなかったため、キッチンにいる2人の様子を見ていたのだが、レオに声をかけられそちらに顔を向けた。
「なんだ?」
「多分、彼。俺達の分も作るつもり」
「そうなのか?」
「うん。食材の量が明らかに2人分じゃない」
私はレオに言われもう1度キッチンの方を見た。
確かに取り出されている食材が多いように思う。量など気にしてみていなかったが、そうか。
「ならゼイラルは、お前達も客人として扱っているんだろう。いいことじゃないか。それにゼイラルはもう貴族ではない。貴族の考え方である『使用人は後で』というのはしないだろう」
「確かに」
「私も毎食、共に食べたいとは思っているのだぞ?」
無理だと分かってはいる。貴族をやめない限り共に食事ができる機会は少ないだろう。と。
「たまにある野宿とかおやつの時間とかで満足してる」
「そんなに共に食べるのは嫌か」
嫌とは言っていなかったが、そう聞こえる言い方だったぞ?
「ロイ様には貴族でいてほしいから。俺はロイ様だから仕えたいって思ってる」
「…そうか。私は将来を見据えてくれる良い騎士を持ったな」
私だからと言われて嬉しく思わないわけがない。
「うん。あとメイドと執事、料理人と庭師もね」
「はは。使用人全員良く仕えてくれてるな」
「うん」
――ロシュはこんな待ち時間にまさかレオの、自分に仕えることへの意思を聞けるとは思っていなかったが、忠誠への嬉しさはあった。
ただそれは他人行儀な主と従者ものではなく、仕事への意欲だというのは2人の共通意識だ
グランツェッタ家に仕える者は血縁とはいかずとも『家族のような関係性をも持っている』。
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