334.必要なのは
和やかな空気のままに、私は彼らとの話し合いを再開させた。
使用人達との話し合いは、意見を出してくれたことで順調に進んだ。
ゼイラルと付き合うにしろ、そうでないにしろ、本人へ告げることが最優先だと。
そこから付き合う事が決まれば、どう付き合うのかを2人で話し合うべきだという。
付き合い始めで、何も決めずに『付き合う』という結果だけになるのは、後々どうすれば良いのかとまた悩みが生まれるらしい。
「ロシュ様にこういった言い方は考え方を固定させてしまいそうで憚られますが…」
「言ってくれて構わない」
――ロシュは遠慮するなと意見を求めた。むしろ憚られる方がロシュは嫌だった。ともかく今は『恋愛』に関しては自分で決めるより、周りの意見を尊重した方が良いと。
しかし嫌だなと思うことは、尊重はできないこともあるようだが。
「では。付き合い始めたばかりの時は相手の良し悪しを見定める期間です。それは置き換えれば、他の貴族様と関わる時と似ていると考えています」
「……つまり有益か否かという思考を、ただの好き嫌いへと置き換えれば良いのか?」
「その通りです」
「なるほどな。好き嫌いか。子供のような発送ではあるが、恋愛にはその純粋さも必要ということだな」
「はい」
『純粋さ』が恋愛の大事な部分であるということを、サジリウスより再度教えられたのち。
私がゼイラルとの恋愛を進めている間に、彼の身辺調査をしておく事になった。
とは言ってもここに来て数ヶ月しか経っていないため、この国で得られるゼイラルの調査など、すぐに終わってしまうだろう。
だが、彼の母国へも赴いて調べる必要を求められた。
「誰が行くんだ?少なくとも2週間、多くて1ヶ月はここを離れるかもしれないのだろう?それに身辺調査というが、あちらの国で貴族であったゼイラルのことをそこそこと調べていては、折角消えた国同士のいざこざが生まれる思うが?」
「鉄格子が設置されたことで、警戒をする必要性が無くなった場所もありますので…こいつらを含めて暇な奴を誰か…」
「皆、一様に仕事はあるぞ?」
確かにまだ事件からあまり日も経っていないが、鉄格子への信頼はあるし、警備の数は減らしても問題はない。
そこから人選するのも問題ない。が、暇になったとしてもそれぞれに一定の仕事は与えている。うむ。
「では身辺調査に適してい者を行かせてはいかがでしょうか?」
バルナが『暇な者』ではなく『適している者』から人を選出すれば良いのではと、案を出した。
なるほど。
「向いているとなると、デネヴィーかベガ辺りか?」
「その2人ならば私も良い人選だと思います」
それにイブランとバルナは、デネヴィーとベガの名を上げた。
確かに社交性があり、剣の腕もある。魔法のある国へと向かい、襲われることになっても自衛できるだろう。
・・・。
しかし、好いている相手の事をこそこそと探りたくはないと思っている自分もいる。
これが仕事相手の貴族であったなら、気づかれず迅速に有益な情報を持ってきてくれることは、大変嬉しいことではあるのにな。
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