332.古参に告げる2
「私達に聞いてほしい考えとは、『想い人ができてどうすればよいか』ということに、なるのでしょうか?」
イブランに続くようにサジリウスが、私の聞いてほしかった『考え』について概ねの答えを言ってくれた。
私はそれに対しての詳細を話した。
「あぁ。概ね合っている。分かっている通りゼイラルは私に好きになってもらうためにこの国にはるばると来た。それが成就した事になる。しかし私は『貴族』だ。『付き合ってくれ』『結婚してくれ』というのを簡単には決められない。が、グランツェッタ家は付き合うことも結婚を簡単にできる。できるからこそどうしたらと思った」
「どうしたら?そのまま付き合ったら良いのでは?」
「イブラン。私は恋情を持ったことがない」
「そうなんですか……」
どうやらイブランには『恋情を持ったことがない』という発言だけでは、分かってはくれなかったようだ。
「イブラン。つまり、ロシュ様は自身の持った感情があるためせいで、常識的である方が彼のためになるのかもしれない、と思ったのです」
「常識?」
バルナが私の説明で理解した答えをイブランへと伝えた。
「バルナ。説明してやれ」
「はい。――貴族は利益があっての婚約が普通です。恋や愛で結婚できるのは、王家や平民だけ。ここまでは宜しいですか?」
「あ、あぁ…」
――初めは子供に教えるようにしてイブランに話しかけたバルナだったが、彼が戸惑った様子を見てそこまで丁寧に語る必要はなかったと、思い直した。
「ゼイラル様は元々貴族、あちらの国も貴族制度については大方同じだと記憶しています。それならば、彼のために『婚約』から始めた方が良いのか、それともすぐに結婚へともって行くのかを迷われている。という解釈をしたのですが、よろしかったでしょうか?」
バルナは最後に私に確認してきたため、付け加えながら私は再度イブランに語った。
彼女が説明してくれ私も自分の考えが纏まったが、語るとしても繰り返しと補足になるな。
「あぁ、全てその通りだ。私は『恋情』を抱いたがゆえなのか迷いが生まれてな。自分で解決できるのならしたかったが、堂々巡りするだけだったために、今まで放置していた。ただ、放置するのはそれはそれでモヤモヤとした。そこで、古参のお前達に聞けば何か考えを出してくれると、思ってな」
「ロシュ様……本当に恋をしているんですね……」
――イブランはしみじみとロシュが恋愛をしようとしていることを受け入れたと同時に、男のやることにしか興味を示さなかったようなロシュが、まさか恋愛に目覚めるとは…と。
結果イブランは、果たしてどういう恋愛をするのかと、興味が沸いてきたのだった。
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