33.謁見。2
陛下は一声さてと入れ、本題であるレイラの婚約話をし始めた。
「ロイヴァルッシュ、今回の婚約の件だが…前向きに考えてくれる気はあるか?」
「陛下。前向きには私が決めることではありません」
「ふむ」
陛下は私の考えを理解したようで、『ということは…やはり?』というそぶりを見せた後、私の答えを待った。
「グランツェッタ公爵、陛下に対してその言葉はどうかと思いますけど?」
「ノアール王子殿下。どうかとは?」
だが、言葉を発しようとした私を遮って、ノアール王子が異を唱えたので、なんのことなのかと問わせてもらった。
「陛下の言葉に対して非を答えるのは失礼だという意味です、グランツェッタ公爵」
異を唱えたか……
「ノアール。ロイヴァルッシュはいいのだ」
「どうしてですか!?王族に楯突いているようなものですよ!?」
「そんなことはない。謁見の間へ来たものには発言の自由を与えている。ノアール。少し控えなさい。話が進まん」
「……はい」
陛下の言葉には逆らえず、ノアール王子の異議は彼の沈黙化で終えた。
ノアール王子は私が陛下に媚びない姿勢が気に入らなかったようだ。普通は媚びた方が気に入られないものだがな……
「ロイヴァルッシュ。返答を頼む」
「はい。私はむすめのレイラに全て委ねます」
「やはりか」
「予測されておりましたか」
「あぁ。話す余地なく断ることはしないだろうし、こちらの意も汲んでくれるからな、ロイヴァルッシュは」
「王族からのお話は当事者に任せていますから」
陛下との関わりはもう10年以上も経つからな。性格や考えを一国の王に理解してもらえているのは、嬉しいものだな。
「うむ。こちらもすでに準備万端だ。後で騎士に送らせよう。何日滞在予定だ?こちらは2週間を基準として準備していたが……」
「1週間を目処にさせていただいております」
「1週間で性格は分かるものか?」
「長く王城に滞在させていただいては、レイラの気が滅入るかと思いまして……」
「ではせめて2週間に出来ぬか?」
2週間。14日。レイラ達を王城に置いていくのか……。
ここは本人に判断を任せよう。
「・・・レイラ」
「……王城で学ぶこともあるかもしれないので、2週間にしていただいても構いません。おかあさまの意志に従います」
「そうか……陛下。滞在は2週間でお願いします」
私の視線や話の流れで自分が判断するのだと理解したレイラは、2週間でも大丈夫だと言ってくれた。
しかし、レイラの表情は少し悲しげだった。
「分かった。では今日よりレイラをノアールの婚約候補者として王城に2週間滞在し、親睦を深めてもらう」
「よろしくお願いいたします、ノアール王子殿下」
「あぁ」
にやついた表情でレイラの挨拶を受け入れたノアール王子だった。
・・・あのにやついた表情は、まるでレイラが自分に惚れるだろうなという表情に、私は見えた。
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