327.親睦を2
スロウからゼイラルが料理が出来ると聞いた私は、ならばと思い、彼に問いをした。
「料理が出来るのならば、ウェイターではなく料理人として雇ってもらえば良かったのではないか?」
ゼイラルはスロウと顔を見合わせた後、
「スロウさんにも同じ事を聞かれました。ですが料理は『趣味』なので仕事にはしたくなかったんです」
と告げてきた。
「スロウと話が合うくらいだ。趣味も得意なことになるのになるはずだろうに」
自身の得意なことを生かして働く方が、手順も覚えやすくまた技術面も上がるはずだ。
それをせずにウェイターを選ぶのは、どういう理由なのか気になった。
それと、手紙で趣味の話は何度かしたが、料理が趣味とは書かれたことはなかったしな。
「趣味ではやはり息抜きをしたいので…」
「息抜きか。確かに趣味ならば、仕事をするより息抜きの方が良いか…」
私は趣味を仕事に繋げることが多かったからなぁ。ふむ。
「…ならば1つ。料理を作ってはくれないか?」
「「えっ?」」
――ロシュの発言にゼイラルとアリエスが驚きの声をあげ、スロウは知りたげな表情をした。
「もうすぐスロウ達が昼食の準備にかかるだろう?ゼイラルさえよければ、それに付いて行き1品作ってほしい、と言ったんだが…ダメか」
「ダメに決まっています。彼は客人であり、趣味を披露させるためだけに料理をさせるのは、失礼かと」
「…私も失礼という点以外は、アリエスさんの意見に同感します。それに披露するには恐れ多いです」
アリエスとゼイラルは否定か。
「そうか。スロウはどう思う?」
「私、個人としては良いとは思います。ゼイラルは信用しても良いですし、異物を混入させる心配ないでしょう。しかし公爵家の料理長を担っている身としては難しい言わせていただきます…ですが。判断はロシュ様にお任せします」
判断を私に任せたスロウが言っていた『異物』とは、『毒』という意味だ。
ゼイラルがいるために直接的に毒とは言わなかったのだろう。
下積み時代のサヤンキより信用するのが早いとは思うが、私とゼイラルの手紙を何通か読んでおり、直接本人と親交した結果。
スロウはサヤンキより自分と気が合うと感じたため、すぐに信用に値すると思ったのだろうな。
まぁ、料理作らせるとしてもライラとレイラには食べさせないがな。
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――恐れ多い。
大変ありがたい、勿体ないこと。の意味を使用しています。
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