326.親睦を1
ゼイラルとの話には時々アリエスが参加したりと、穏やかな雰囲気で会話は進んでいた。
アリエスがゼイラルを邪険に扱うような言動が減り、ひとまず安心だと感じた。
――コンコン。
そこへドアからノック音がした。
音の強さから外にいるベガからではないと分かる。私は音がした扉の方へと少し大きめに声をかけた。
「誰だ?」
「スロウです」
私はゼイラルに視線を向け、スロウが入ってきてもよいかと聞いた。
彼は、今自分の伝えたいことは伝え終わったので、とスロウの入室と入れ違いに出ていく旨を伝えてきた。
「入れ」
「失礼します」
席を立ったゼイラルを見てからスロウに入室を促した。
「スロウか。どうかしたか?」
「あ。いえ。そのゼイラルがここにいると聞いて…お邪魔でなければと来たのですが…大丈夫そうですね」
「あぁ。スロウのお陰で良くなったそうだぞ?」
「昨夜はありがとうございました」
スロウはゼイラルへと近づき、会話をかわして再度心穏やかになったのかを確認している。
そんな2人が気にならない程度の小声で、アリエスへと声をかけた。
「アリエス」
「何でしょう」
「仕事は午後に回しても間に合うと思うか?」
「はい。ロイ様の手腕ならば可能だと思いますが…。お話を続けるのですか?」
「どうせなら親睦を深めようと思ってな」
「ゼイラルとですか?それともスロウさんとですか?」
見上げたアリエスの眉間にはうっすらと皺がよっていたが、気にすることなく会話を続けた。
「両方だな」
「…ではもう1つお茶を用意してきます」
「頼んだ」
数秒の間、私の真意を見抜こうとしたアリエスだったが、結局分からなかったようで、スロウの分と私とゼイラルの分の茶を作りに向かってくれるようだった。
ゼイラルとスロウの横を通りすぎ、アリエスが部屋の扉を開けたタイミングで、私は話をしようと2人にソファーへとかけるように言った。
素直に受け入れてソファーへと座った2人からは、親睦が私よりある気がした
ゼイラルとスロウは昨日のうちに大分仲良くなったようだったので、きっかけはなんだったのかを問うた。
「実はゼイラルに持っていった料理に入れてあった隠し味を言い当てた所から、会話が弾みまして」
「料理か…」
――ロシュはスロウとゼイラルが『料理』の話で会話が弾んだと言った瞬間。
スロウがロシュの料理について語ったのだと悟ったのだった。
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