324.談笑よりも、思い出した方が良かったな
しばらくして、サヤンキを筆頭にスロウと配膳をしだす。
いつもとは逆の光景に違和感があるものの、食事が出来ることに代わりないため、配膳が終わるのを待っていただが……
「……アリエス」
「何でしょうか?」
「すまないがゼイラルを呼んできてくれ。朝食だと」
「…かしこまりました」
アリエスは私の願いを受けて、ダイニングから去っていった。
「とうさん…もしかして」
ライラがまさか…と、私がおかした失敗を把握したようだった。
あぁ、レイラもか。
「いや、伝わっていると思っていたからな。よくよく思い出して見て気がついた」
「せめて配膳が始まる前に思い出してあげたください!」
レイラが可哀想といった表情で、私を叱るように声をあげた。
私は朝食の配膳が始まっても来ないゼイラルに疑問を感じたのだ。
彼はこの家の朝食の時間は覚えているはずだと思っていたからだ。
だが、そもそも『朝食を共に食べよう』とは誘わなかった。
ゼイラルの分で1食増えるという事を伝えたかもしれないが…。
これが身内か、普通の場合だったなら朝食を食べにここへ赴くか、調理場に行って朝食を頂きたいという事を彼なら伝えるだろう。
しかしゼイラルは身内ではなく友であり客人でもある。
そこに昨日、夕食を部屋に配膳したというのが重なれば、『朝食も運ばれてくる』と思っていても不思議はない。
案の定。
ゼイラルは朝食は部屋に運ばれてくると思っていたらしく、アリエスの朝食への誘いの言葉に少なからず驚いたらしい。
その場の空気が申し訳なさやいたたまれなさを抱いた者達によって静まり、一瞬気まずくなった。
「では揃ったことですので、朝食にいたしましょう、ロシュ様」
「…あぁ。そうだな。ゼイラルも座ってくれ」
「はい」
だがスロウの一声が響き、私は気持ちをすぐに切り替えゼイラルに席に座るように促した。
そこからはサヤンキによる、料理の説明を受けた後。
私が忘れていて申し訳ないと、ため息をつくようにレイラが謝ったり、それをライラがため息は良くないと少し的を外した言葉をかけたりして、場はさらに和やかになり、食事を心置きなく堪能できた。
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明日は日曜日なのでお休みです。
また月曜朝9時にお会いしましょう!