314.誰にしようか。
おはようございます
ゼイラルを客室へと運ばせ、イブラン以外の使用人と私は応接室に残っていた。
「さて。私がゼイラルに話しかけていた様子を見ていたな?あの状態はいつまで続くと思う?」
さすがに自分に『トラウマ』を持っている者と接した経験は少ない。
それに例え持たれていたとしてもその者は大抵が騎士だったので、鬱憤や恐怖は剣に乗せて晴れさせていた。
まぁ、それによって『トラウマ』は無くなっても、ただただ『怖れ』を抱かれる事にもなっているのだが。
「我々はゼイラル様の性格を知りませんので何とも言えません」
「そうか…なら誰をつけさせれば早く回復すると思う?」
私はゼイラルの心身を案じているが、経験からそれは誰かと話せば治りうる精神状態だと判断したからに過ぎない。
治れば話も直ぐに出来るし、精神的にも強く成れるだろうからな。
『私』という存在に関連する全てに『トラウマ』を感じてしまっているのなら、すぐにでも自宅へと返して自然治癒。
もしくは彼が受け入れてトラウマを晴らすしかない。
「優しさならクエリア、気軽さならオリオン、励ましならスロウさん」
レオが私の問いに選択肢という形で返してきた。ふむ。
クエリアならば確かに滅多に怒ることもなく、ゆったりとした口調は優しさを感じることも出来るだろう。
誰かの精神状態を支えて、負の感情から抜け出させるのにオリオンは不向きだと私は思うが、気軽いからこそ脱することも出来るのやもしれない。
スロウは…確かに誰かの失敗に対するフォローは完璧にこなしてくれるだろう。サヤンキには厳しいが。
「と、レオは言っているが同意見なら誰を推す?」
「スロウさんが宜しいのではないでしょうか?真面目な方には優しさと軽薄より、励まし前へ向かせられる方が合っていると私は思います」
「レオもアリエスはどうだ?」
「スロウさん」
「デネヴィーと、同じ意見です」
皆、スロウで良いという結論になったのだが、アリエスだけはまるで『ロイ様がゼイラルにそこまでしなくても』と、言いたげな表情を終始していたが、今は無視だ。
「分かった。デネヴィーはライラ達と側にいる使用人達に、ゼイラルが泊まることを伝えてくれ」
「了解しました」
「アリエスは執務室に戻り、茶の準備をして待機。もしくは書類の整理を頼む」
「かしこまりました」
「レオと私はこれからスロウに話をしに行ってくる」
私は使用人達に指示を出すと、自らの予定も告げてから応接室を後にした。
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ロシュのトラウマの解釈は、彼女の考えです。あしからず。
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