310.瞬発、伝導。★
――ロシュが口に出してしまったという言動を振り返っていた時、辺りに強い風が襲った。
それはまるであの侵入者が使っていた風の魔法に似ていたがために、ロシュは眉をしかめ、レオは全身がロシュを守るために動こうとしたが、すぐに今は違うのだと思い至り力を抜いた。
――ガタリッ。
突然強風が吹き、私とレオが過敏に反応してしまったが、側にいたイブランもアリエスは何も言わずにいてくれた。
何も言われないのは、あの日の反省や後悔の言葉しかお互いに出てこないからだと分かっているからだろう。
――ガタッッ。
――それはベランダに残っていたゼイラルが、不運にも梯子に両手足がかかった瞬間。
強風が梯子を揺らし、ロシュのいる方へと倒れていった。
「あっ――」
「――様!」
――ロシュにゼイラルと梯子が迫っていくのを、その場にいたほぼ全員が見ていた。
誰が声を上げているが、最早聞き取っている場合ではないほど危機迫る状況に、
「支えろ!」
「「「っ、」」」
ロシュは一言『支えろ!!』と怒号に似た叫びを上げた。
その場にいた者でそれを脳が理解し体を動かせたのは、半数だけだった。
――ドタッ!
「はっ、ふぅ――」
「うっ……?」
身体にきた衝撃で一瞬息が詰まった、新たな痛みはないため怪我はしていないようだ。
私が発した『支えろ』という言葉に反応したイブラン、スピオン、レオの3人がそれぞれの位置にて梯子を支え、勢いを殺した。
私はその殺された勢いのままに降ってきたゼイラルを受け止められたが、もし彼が梯子から手を離していたなら、大怪我をしていただろう。
しかしゼイラルは身体が硬直でもして離すことはなかった。
結果。梯子は支えられ、彼を助けることができた。
しかし。私は呪われでもしているのだろうか?
自身や回りの者の怪我が多いな、と思い安堵と苦労に対してため息をついた。
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倒れる角度、速度、人の瞬発力の伝導速度に関しては、どのくらいなのかという測定はしておりません。あしからず。