309.談笑、
おはようございます
「しかしどうしても伝えたいのならば、殺気でも出して私に気づかせれば良いだろう」
「スピオンさんはロイ様のお考えを読まれて告げない、という選択をとったのです」
「ほう?」
「ロイ様なら『人員配置の報告』より『防衛面の強化完了』を優先するのでは、と」
スピオンの読みは当たっている。今の優先順位をつけるなら、防衛面の方が先に来る。
連携などしなくても、使用人1人で敵を相手どることは出来なくはないのだ。連携があれば勝率が上がるからという理由なだけ。
今すぐに防衛面が整うなら早めにしてくれた方がいい。
「なるほどな。だが書類仕事などいつでもできる。今すぐに整えたい防衛面に関する話ならば、やはり話してくれた方が良かった」
書類仕事での集中で、重要な事を聞き逃すという状況になるのは嫌だな。
――ロシュは自身の集中をして回りの音が聞こえなくなってしまう現象をどうにかせねばと、心に決めるのだった。
あれから数時間。
昼食がてらの小休憩を挟んだのち、鉄格子の設置を終えたノルイとその手伝いをした者達は、個々に接続部分など不備が無いかの最終点検をしていた。
それを私達は下から眺めていた。
「鉄格子がついてるのを改めてみると、外観が暗くなったように感じるな」
「そうですね」
側にいたアリエスも私と同様に感じていたようだ。
まぁ、これでこども達と私の部屋の防衛面は緩めても良いだろう。
「ロシュ様。警備の配置替えはいつにします?」
「しばらくは様子を見たいからな…3日後で良いだろう」
「了解しました」
イブランの問いかけは、騎士長を統括する者としての言葉だろう。
防衛面に優れているところには、余程の事がない限りは警備はいらないからな。
休めるときには休ませ、働けるときに十全に動いてもらうためには早めの日程管理も時には必要だ。
イブランが騎士以外で真面目だと可笑しく思えるな」
「ロシュ様。そんなこと思ってたんで?」
「ん?口にしていたか?」
「バッチリと」
「僭越ながらロイ様の意見に私も同意致しておりますので、言葉にされても何の問題もありません」
「俺も同じく」
「お前らまで…!」
「まぁ、それだけ騎士としては優秀だとも言っているんだ。誉め言葉として受け取ってくれ」
「はぁ。仕方ない。今回は受け入れますがね?次はもう少し隠してください」
「あぁ。善処しよう」
心の中だけで思うのはありだが、口に出すときはもう少し嫌味でないように言え、と暗に言われた。
私とて言葉にするつもりはなかったのだが、こうも良い日和だと何か会話でもしなくなる……と思ってしまっていたから、出てしまったのだろうな。
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