304.重なり出来なく、のちのちに。
バルナがノルイが乗った馬車が到着したと言いに来たのだが、ほんの少しだけ言い淀んだ素振りを見せた。
言い淀むなんてと思ったが、理由を聞いて『なるほど』と思った。
鉄格子を運ぶ作業があるため、乗ってきた荷車の側から離れずに待っているらしいノルイの所には、イブランとスピオンを向かわせ彼の指示もと作業を開始しておけと指示を出した。
そして私はというと、ノルイの連れを応接室に呼び、話を聞くことにした。
「その。お久しぶりです」
「そうだな」
相手がソファーに座るのを待っていた私は腰かけるのを見届けると、ノルイと共にグランツェッタ家へと来たゼイラルと、言葉を交わした。
ゼイラルとの対面がまさかこんな形になるとは。
最後にやりとりした手紙では、街で茶をという話だったのというのにな。
…しかしその手紙も、彼からの侵入者への対応、私の怪我、仕事の片付けなどで返事は出来ていなかった。
いや。強引に間を見つければ書けたのだが、やりとりとなると『侵入者』の事も話さねばならなくなると思った私は、使用人らと協議した。
結果。
こちらで全て調べ終え、尚且つ安全面が整ってからゼイラルを家へと招き、詳細を語ろうということになった。
最悪、ゼイラルの祖国にまで話が行くようであれば、『他国の御偉方と話し合いをする』ということを報告書として書き、国王に指示を仰がねばならない。
それに『魔法が使用できる敵により、負傷した』ということは報告してある。
国同士の交渉となる可能性も少なからずあるのだ。
まぁ、事件は『私』を狙ったものではなく、『ゼイラル』を狙うための餌とされただけだ。
『警備せよ』『こちらも入国審査を強化する』とは返信を貰ったが、あとは何も指示はなかった事から、解決はこちらに任せられたことになる。
皆も私も慎重になるのは致し方ないだろう。
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