302.今1番価値ある仕事であった。
アリエスが扉の外から呼んできたバルナを含めて、最終の話し合いが進められ、鉄格子の一部には、ディーバが持ってきたデザインも使われることになった。
小細工部分さえ変えてしまえば、鉄格子としては機能するという事だった。
『物はいずれ劣化します。鉄ならばなおさら。防衛面を心配しているのでしたら、定期的に変えることを基準にしてはいかがでしょう?』と、バルナが言わなかったら使うことはなかったし、それもそうだと思った。
家の塀を越えられるのは仕方ないとしても、家の中まで入ってこさせない事が大事だ、とな。
…劣化しているのが確認できてから変えるのでは遅い可能性もあるのだがら。
その日の話し合いで、デザイン・設置場所・料金など、全ての必要事項が完遂できたため、あとは後日にしようということなった。
鉄格子を設置する日取りと時刻を決め、少しの座談をしたのち、イブランがエクナム親子を玄関まで送っていく姿を応接室で見送った。
そこへアリエスが先程までとは別の紅茶を出してくれたため、一息つくことにした。
「ふぅ。久々の対人が彼らで良かった」
「…最初は緊張なされていましたね」
「気づいていたか」
「はい」
「久々に身内以外で接触するんだ。緊張もする」
「お疲れ様でした」
身内とは使用人らも入るため、身内以外とは外からの客人という意味で使っている。
身内以外とはリラックスして会話していたしな。
信用するイブランの友人という事で、ノルイ達とは砕けた口調で話したが、本当なら丁寧に話して『外の仕事』として話すつもりだった。
私にとって口調とはある種の正装なのだ。だからそれを外して仕事をするのは、楽といえば楽なのだがな。
「はぁ、だが相手の考えを読むのは少し鈍ったようだ」
「その割にはお2方共考えを読まれ、驚いていましたよ」
「あれは自分の記憶と彼らの話していた内容を合わせた結果だ」
「そうなのですね…」
「あぁ。だが彼らと話していて、少し思考を巡らせれば勘は取り戻せそうだと確信もした。最初に緊張をしただけで、あとは有意義なものだったな」
――満足げに話すロシュにアリエスは、『もう勘は取り戻しているでしょう』とは言わなかった。
言っても『まだまだだ』という返事が帰ってくることは想像できたからだ。
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2年目、頑張ります。
明日は日曜日のため、お休みです。
また月曜朝9時に彼女達に会いに来てくれると嬉しいです。