301.考案、思案。
職人達と仕事の話をし始めて30分程が経った。
元々ある程度の考案をしてくれていたため、そこから削減したり添加したりしかしなかったため、1時間もかからなかった。
「さて。最後はデザインか」
「それは息子がある程度描いてくれている」
「これです」
「…薔薇か?」
鉄格子のデザイン案として出されたのは、枠組みから茎の部分がうねり、中心部で咲く薔薇の絵だった。
「はい。外にガーデニングがあると聞いたんで、花同士で統一性があるかと」
「ただの鉄格子と比べると劣化が激しそうだな」
「劣化ですか?」
「あぁ。柄だったなら良かったのだが、本物の花のような大きさで型どって作るとなるとな」
繊細な細工は雨風に日射などで劣化の速度が倍になる。
ディーバの出してくれたデザインは、室内の扉に施す物としてはいいものなのだがな。
「ほとんどの貴族様ならこのデザインを喜んで使うんですがね。ロシュ様はやはり機能性ですか」
「分かっていたならディーバに描いたものを出させるな。きちんとした理由を持って今、別の物を描かせれば良かっただろう?」
「今、ですか…?」
「あぁ」
『今』と聞いた瞬間、ディーバは表情を曇らせ申し訳なさそうに、
「……すみません、ロシュ様。俺、デザインを書くのは苦手なんです」
と言ってきた。
苦手だという言葉が帰ってくるとは思わなかった。
「苦手?ではここに出されているのはどうしたんだ?」
「先々代が前に使っていたデザインに手を加えたものです」
1から作るのは無理だが、少し描き換える程度ならできるのか。
まぁ、見た目だけを気にしている貴族ならデザインを即決して使うだろうがな。
「…なるほど。ならばデザインはこちらに任せてもらっても構わない」
「伝があるので?」
「あぁ。アリエス、呼んできてくれ」
ノルイの言葉に肯定で返すと、ある程度状況を把握しているであろうアリエスに呼び出しを頼んだ。
「バルナ様のみでしょうか?」
「クエリアは今、寮に戻っているのだろうからな」
「かしこまりました」
前にも考えていた通り、デザインに凝ることになるのならクエリアかバルナに任せるのが1番良いだろう。
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明日でこの小説の投稿から1周年!
明日は4のつく日のため、お休みです。
1周年でもそこは変わりません。
次回は土曜日9時に投稿されます。