3.こどもたちの婚約話
私の目の前のソファーの左側にレイラ、右側にライラが座った所で、私は呼びつけた理由を話し始めた。
「さて。二人に婚約に関する手紙がいくつか来ていた。
侯爵家と伯爵家の者から5通がライラに。
伯爵家と子爵、男爵家から6通がレイラに。
それから、厄か、断りづらい所からが1通ずつ二人にきている。今回は2人にこの婚約をするかしないかを自分達で決めてもらいたい」
2人は、婚約と言った辺りでため息が出そうな顔になり、厄介もとい断りづらいと言った辺りでは顔を少し曇らせた。
自分達で決めてもらうと言った時のキラキラとした目の輝きは、断る気なのだと思った。
別に断ってもらって構わないが。
「質問があります」
「言ってみなさい」
私はライラに質問をする許可を出す。
怒りや不安感で、むやみに声をあらげないのは教育の賜物だなと感心した。
「はい。まず、俺、私達に届いた手紙がどこの誰かです」
「あぁ、そうだった。厄介すぎて言い忘れる所だった。あと、『俺』から『私』に言い変えたのは今の状況では正しかったよ、ライラ」
「!!」
私としたことが誰からかを言い忘れてしまっていた。
そのあと、ライラに目上の者に対する言葉遣いが良かったことをいうと、ライラは表情を綻ばせる。
褒めただけで喜ぶなんてまだまだ子供だか、幼さが残っていてその笑顔…レイラと共に可愛い、っと、私も気が緩んでしまう所だった。
「…まず、レイラには王家の第4王子ノアール様だ」
「厄kいえ、断りづらいですわね…」
ノアール・シュヴィノルイング。
レイラより2つ年上の王子で、美意識が高く整った顔立ちの者全てが自分のものだと思う節があるらしい。
ただし年下のみ。
「あぁ、本当にな…ライラには、うちと同じく公爵家のプリリル公爵の次女、ユユモ様だ」
「ピンクの…」
ユユモ・ヴィ・プリリル。
ライラの1つ年下で、とにかくピンク色が大好き。
髪もピンクに近い色で瞳はまさにピンク。
レイラがピンク色を好まなくなったのもこの子と会ってからだった。
ちなみに、プリリル公爵家に産まれたのは全員女の子である。
「その通りだ。さて。一応断ることが出来るが、どちらもすぐに断ると、こちらに抗議の手紙が送られてくる可能性がある。主にプリリル公爵夫妻と側室様に。まぁ、抗議など我々の家には無意味だが、断り方というものがあるだろう?」
「なるほど」
「そこでわたくし達の出番ですのね」
婚約者候補自身に断らせるという方法をとる。
手紙には、「本人達同士で決めてもらいましょう」とでも書いておけば、問題はないだろう。
私自身が断った訳ではないのだし。貴族の政略結婚的なものは我が公爵には通じない。
「理解が早く助かる。2人には婚約者候補として王城と公爵家にいってもらいたい。期間は1週間。出発は…そうだな、手紙の返事を考えて3日後だ」
「最悪ですわ!」「最悪です!」
2人は何でとばかりに声を同時に荒げた。今日はよくシンクロする。
それに教育の賜物だと思ったが、まだまだだったようだ。
しかし、余程の事がない限り遅らせるわけにはいかないのが、現状だ。
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