297.てつごうしのデザイン
「ではこれよりスロウさん、イブランさんの元へと言伝てをして参ります」
「あぁ」
使命の言葉を口に出し再確認すると、入ってきた時より憑き物が落ちたような表情でデネヴィーは執務室を去っていった。
――その様子に執務室にロシュは、ようやく午前の仕事をやり終えたのだな、と再びリラックスしたのだった。
その後私達は、昼食の準備が出来たと呼びに来たサヤンキと共にダイニングへと移動し、ナイフを使わないため食べやすい昼食のカルボナーラを食した。
…どうやらイブランは、スロウには伝えていたらしい。
言いたいことが増えた……な。
昼食後。
イブランが呼び寄せた職人が来る前に食べ終えた私は、ダイニングに残り、使用人が来訪者が来たことを告げに来るのを待っていた。
ライラとレイラは、午後の授業をするために部屋へと戻っていった。
本当なら仕事を手伝うために授業は全て無しとしたのだが、来客があっては書類仕事どころではないため、午後から授業をする運びとなったのだ。
ライラは1度、交渉も経験しておきたいと願いでてきたが、今回のはオーダーメイドの服を買うような感覚のため、遠慮させた。
さすがに鉄格子のデザインを数時間で考えろ、と言われても無理だろう。
私も無理だ。思い付くとしたら門の一部を真似ての案や牢の鉄格子しか思い付かない。
家の外観を損ねるようなデザインは認められない。これも領主の家であるがゆえ、かもしれない。
豪華であればそれは領地が繁栄している証拠にもなる。
しかし、無駄に金銀を使い、城のようなものをつくればそれは傲慢ととられてしまう。塩梅が難しいのだ。
そのため統一性があったり、所々に散らばるようにある良い景観は、良い職人を雇い、行き届いた管理ができる(使用人を雇っている)のだ、と見せつけることが出来る。
それが鉄格子をつけていなかったひとつの理由でもある。他にも窓を割ってまで侵入者など来ないという私を含む歴代の考えがあったのだと思う。
もう景観がなどと言っている場合ではない事態が起こっているが、デザインを重視することができるのならば、良いに越したことはないとも思う。
自宅が牢のようには見えたくはないからな。
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明日は日曜日のため、投稿はお休みです。
また月曜日の朝9時にお会いしましょう。