296.生真面目な者は
ライラやレイラが頭を上げるようにデネヴィーへと促すが、なかなか土下座をやめようとしない。
これは私が言わねば謝ることも土下座もやめないのだろうな。
『仕事での失敗は、雇い主の許しがなければ、許されはしない。』という『仕事での失敗』に関しての基本的な行動をデネヴィーはしているのだが、その雇い主の子からも言われてやめない所も真面目だ。
身内の者から許されたのだからいいだろうと、甘くなってしまう所を彼と、女騎士のシリウスだけは雇い主で当主である『私』の許しを求めてくる。
多分だが、他の使用人を介して失敗を伝えられるのが、不満で嫌な事なのだろう。
…失敗を滅多にしないからこそ、重くと耐えてしまうのかもしれんな。
「頭を上げろ、デネヴィー。決まってしまったことは仕方ない。イブランが進めてくるくらいだ。腕は確かだろう」
「…申し訳――」
「もう赦す。それに謝るくらいなもう少し情報はあるか?何時頃かは聞いているか?」
頭を上げ土下座をやめたのを見て、仕方ないと言ったのにも関わらずまた謝ろうとしたため、はっきりと『赦す』と言ってやった。
…言葉に重みが無くなってしまうが、適材適所で『赦す』という言葉を使おう。自分を責め続け落ち込む前に、な。
「……はい。13時頃だといっていました」
「昼食を急がせて正解だったな」
「もう少し急がせますか?」
「時間的にまだ作っている最中だろうから、飾り付けを凝っているようならやめさせてくれ……ライラとレイラは――」
「俺たちも見目は気にしないよ」
「時間前にその職人さんが来てしまっても、軽食程度をお出しして、待ってもらえばいいのでは?お相手をイブランさんに任せて」
レイラからの提案に私は名案だと思った。怠慢をした者にはちょうど良い罰のひとつだと。
「…ふ。そうだな。わざと遅らせることはしないが、もし職人が来てしまったなら、イブランに相手をさせ待ってもらおう。あぁ、それとデネヴィー」
「はい」
「イブランにしばらくの間…いや。今日より1週間程、休日を含む日の数時間をスピオンの手伝いをしろ、と伝えておいてくれ。日程が決まり次第、また報告を頼む」
接待だけではイブランには不足だ。
だがら彼が1番に等しいほど苦手としている『草木の世話』を命じることにした。
曰く、ポキッと折れたり散ったり、雑草と花の区別がつかない、とのことだ。
まぁ、これを気に区別できるようになれば、『花を愛でる』という趣向が生まれるやもしれないしな。
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デネヴィーやシリウスの他にも真面目な者はいますが、赦されても自分を責め続けてしまうという性質の者は今のグランツェッタ家には2人しかいません。