295.報告の怠慢
あれから私のペースに合わせるため、アリエスも手伝い始め、昼食前には半分を越える量の書類が処理、整理がされた。
うむ。半分も終わってしまえば、捗っていたなと思えた。
――コンコン。
書類仕事を終えた我々が休息をとっていた所に、ノック音が聞こえた。
先ほどジェミネが調理場に昼食の準備を少し早めてほしいと伝えに言ったが、もうできて呼びに来たのだろうか。
私は一言入れと告げた。
「失礼します」
「デネヴィー?どうかしたのか」
「報告を…と、思いまして」
神妙な表情で部屋へと入ってきたデネヴィーは、報告をするために来たのだと言った。
「聞こう」
「とうさん、俺たちは――」
「デネヴィー」
「いてくださっても問題ありません」
「だそうだ」
「ならいさせてもらいますね」
「続きを」
ライラとレイラが聞いても良いということは、血生臭い類い話でないと理解し、私は少し肩の力を抜いた。
――ロシュは武術による実力行使が関わる話ではないことで安堵した。
侵入者からの怪我がまだ完治していない状況の中、こども達にそういう類いの話を聞かせれば、関わっているだけで心配をされると理解していたのだった。
「はい。先日、侵入者が容易に入ってこれぬよう『鉄格子』を設置するというお話ですが、イブランさんのお知り合いの職人が担ってくれる事になりました」
「そうか」
「ただ…」
デネヴィーの神妙さに拍車がかかった。
言いたくないのか、言いづらいのか…どちらとも取れる沈黙に、私は続きを促した
「ただどうした?」
「申し訳ありません。私がイブランさんに全て任せてしまい、結果。その職人が本日来訪するとのことです」
「…今日か」
「申し訳ありません!!威厳ある方ですが抜けている所がある事も承知していましたが、このような事態ですら出されるとは思わず!」
男性の使用人の中でも特に真面目なデネヴィーが、床に額をつけ土下座をし、イブランに任せてしまったことで、急遽来訪者がいることを謝罪した。
その場にいた皆が突然の土下座に驚いただろうが、私は前にも同じような行動をした者を思い浮かべて、驚いた。
まさか、謝罪をする=土下座。などという謝り方がじわじわと流行しだしているのでは……
はぁ。真面目が過ぎる者は、自分が悪くもないことすら自分がしっかりしていれば…自分もいけなかったのだと、思い詰めるからな……
……うむ。
――ロシュはデネヴィーを謝罪させるに至ったイブランを後に叱咤することを決意した。
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