292.反抗期…ではないのだよな?
『俺にも仕事を少しだけ手伝わせてね?今こそ勉強の成果を見定めるときだよ』
ライラのこの言葉に私は一瞬、呆気に取られた。
私が仕事をするのかを分かってもらおうとしてこうなったのは、分かる。
が、ライラの思考が『私の仕事を手伝う』に至った理由が、よく分からない。
確かにライラと、それからレイラの『領』に関しての知識は必要なことだと思って学んでもらっているが、手伝わせるために教えているわけではない。
それに、だ。
私が断ると言う前にライラは、自分の今の実力を知りたくないかといってきた。
…勉学に関しては紙での採点結果しかほとんど見ていない。
いくら知識をつけても、その成果が見られないのは残念だと思っていたため、魅力的な言葉であった。
「ライラ・ヴィ・グランツェッタ。仕事を手伝いたいということは、一時的にでも領民の生活を担うということを理解しての発言だな?」
「はい」
領主として、ライラの意思を見極めた。
遊び半分、私を心配して、やってみたいから。ただただその考えだけで動いていたならやらせるつもりはなかった。
しかしライラはきちんと仕事で担う覚悟があると、判断した。
「……分かった。だが今回やらせるのは整理だけだ。分からなくなったらアリエスに聞くんだぞ」
「うん!あ、その前にちょっと出るね」
ライラは私の返事を聞くとそそくさと執務室を小走りで去っていった。
「ライラ様!?僕もついていきます!」
それをこれまで様子を黙って見ていたアルタがついていった。
「アリエス」
「はい」
「ライラのあれは良い成長だと思うか?」
「ロイ様の心をつくような言葉を選び発していたため、貴族の交流などを考えると、良い成長だと思います」
「そうだよな。だが、こうもいきなり来ると成長ではなく、反抗期ともいえる考えが過ってしまった」
「今のところライラ様とレイラ様に、反抗期などの傾向は見受けられません」
もし来ていたなら扱い方を変え、関わりを減らす、という悲しい結果になるとことだった。
願わくば、反抗期は無い方が嬉しい。ギスギスするのは居心地が悪いからな。
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ロシュの中での反抗期の定義は、
『イラついた様子が見られる事』
『突然性格が変わったようになる事』
『上下関係、親や子の関係性を無視した反発』
です。
日曜日と月曜日の24日は投稿がお休みです。
お盆休みからまた連続の休みが続きます。あしからず。
また火曜日9時にお会いしましょう!