290.協調性欠落時期に
『体が健康であることが『主』として必要なことではない』
私が過去に熱を出してまで仕事をした時に、心配してくれたアリエスとバルナに言った言葉だ。
上に立つ者としては自分勝手な言葉だという自覚はあった。
普通なら『健康であること』で長く職を勤めることが出来るという考えになるはずなのだが、当時の私は自分が何でも出来、自身の身体をも完璧に把握していると思っていたのだ。恥ずかしいことにと。
周りからもそう思われていたしな。
…だがその分、協調性が欠け出した。
1人で何でも出来るということは、周りがいるとその行動に制限がかかると判断していた。
しかしふと、こども達が使用人と仲良く笑顔で会話しているのを見て『あぁ、両親が生きていた時は私も…』。
そう思ったらあとは簡単に自分から、『協調性』が無くなってきていることを理解した。経験があったからこそ理解できたのだろうがな。
それからは使用人達とより話をし、彼らと家族のように仲良くするようにした。
言った言葉は撤回はしなかったが、心配は受け取る事をするようにもした。
「・・・」
「ライラ。こればかりはアリエスのせいじゃない。むしろ最初の頃は止めてくれていたさ」
「…最初の頃?」
「あぁ。アリエスが医師としての技術を得た頃だ。体調を崩し、そして治ってからすぐにまた仕事をやっていた時にな…」
親密になればなるほど、私が担っていた事を少しずつ使用人に取られ…いや、やってくれていた。
アリエスも医師としての技術を得て私の体調管理をするようになったのだが、その時期に体調を崩し休息を必要としたため、休んだ。
翌朝。治ったなと自己判断の癖が治って無かった私は、執務室に向かい仕事をしていた……のをアリエスに見みられた瞬間彼女が……ふっ。
あれは先日の事件の時よりも悲鳴じみた叫びだったな。
――今となっては良き思い出としていたアリエスから昔言われた言葉を鮮明に思い出し、その時の言葉をロシュは声に出した。
「『貴女様は身体を壊すために生きているのですか!?馬鹿ですか!?』とな」
面と向かって『馬鹿』と言われたことはなかったため、新鮮で嬉しかったともを覚えている。
まぁ、その後『アリエスかバルナが側にいる事を条件に、怪我や病気後で仕事をし続けても良い』という提案が受理された。
ちなみに。
昔の何でも出来るという考え方から、擦り傷や紙などで負った切り傷は『怪我』した内には入らず、知恵熱や疲労熱は『病気』に入らない。という思考がまだ抜けない。理解はしてるが、理解していることすら忘れて昔の思考になってしまうのだ。
半分癖だとして治すことを放棄しているからだ、とオリオンに言われたな…
だが、医師からしても他からしてもあれらは立派な『怪我』と『病気』なのにな。
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協調性。
互いに助け合ったり、同じ目標に向け行動すること。
の意味合いを使用しています。