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29.女性らしさはもう


荷造りを終えた私達は宿を後にする。

イーツァは気まずそうにしながらも、見送りをしてくれた。


気まずそうにしていたわけは、アリエスから馬車に乗る前に手紙を受け取り、それを読んで知った。



『イーツァはロイ様を男性だと思い口説こうとしていましたので、ロイ様が女性であると話しておきました。

女性に恋愛感情が湧かない彼女には、同姓を口説こうとしたことが恥ずかしかったのでしょう』



隣に座っていたレイラも私の許可を得て覗き込むように、手紙を読んでいた。



「とうさまだったら女性からお誘いを受けても、当然だと思います」

「そうか?」

「はい。とうさまは女性らしさがないですから。服装だけ見たら男性ですよ」

「そうだな」



女性でズボンを履いている者は少ないしな。



「…女性らしさがなくてもいいのですか?」

「ん?あぁ。大丈夫だ」



昔からの使用人も私に女性らしさを求めていないからな。女性らしくしなくてはというプレッシャーもない。



「私には『女性らしく』というのに……」

「レイラは昔からお姫様みたいになりたい!と言っていただろう?だから昔からマナーや刺繍などをやらせているんだ。学ぶのも剣術より好きだろう?」

「…はい」

「ライラのように手にたこを作ってまで剣術や、腰を痛めてまで馬に乗りたいか?」

「そこまでは乗りたくはありません…」



レイラ自身が貴族女性が学ぶべきことを好きだからこそ、それに協力したくて『女性らしく』と言っているのだ。

もう女性らしさはいらないと言えば、貴族女性に必要な最低限のこと以外はやらせない。



「私は剣術や馬の方が好きだからな。それに…」

「それに?」

「身体に女性らしさがないからな…」

「・・・」



私も胸があったなら。少しは女性らしくしようと思ったかもしれない。


が。

私の胸は。胸の形を保たせる下着を必要としていないほどない。思春期になっても育たぬ胸元。それも私が女性らしさを必要としなくなったのを促進したのかもしれない。



「まぁ。いまさら膨らみを持ち始めても困るな。動きづらいだろう」

「そう、ですね」

「気まずそうにするな。私はもう育たぬものに未練はないのだ」

「……はい」



レイラは私の考えを理解しましたとばかりに微笑んだ。




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