283.私ではなく。
部屋のドアがノックされ、アリエスが代わりに入室を促す声をかけ入ってきたのは、イブランとデネヴィー。
そうか。あの男から情報を聞き出したのはこの2人だったのか。
だがどのようにとは指示もしてなかったし、聞いてもいなかった。見習いの使用人以外なら誰でも尋問させられるからな。
「ロシュ様のお加減は?」
「…体調面では問題ありませんが、傷の治癒のためには十分な睡眠時間が必要ですので、あまり長くは滞在なさらないようにお願いします」
「分かりました」
「でもそれはロシュ様次第だろう。自分が怪我してるって分かってて翌日に聞こうとするくらいだ。ねぇ?」
デネヴィーは私を気遣い、アリエスに体調を確認してくれたのだが、イブランは私次第だろうと、同意するような問いかけをしてきた。
私は苦笑いで応えた。彼女にそうだと伝えさせるより、苦笑いで返した方がすぐに応えられると思ったのでな。
それにイブランは、きちんと私が肯定したという事を理解し『ほなら』と言って、アリエスの表情を訝しげにさせていた。
訝しげなのは『自分もそれは分かっています』という意思表示だろう。
だが、自分の怒りで話を長引かせたくないためか、一息ついた後、報告を促したアリエスにより、改まった2人が淡々と尋問で得た情報を提示していった。
彼らからもたらされた報告を要約すると、あの男は恨みから私を狙ったらしい。
ただし。恨まれていたのは私ではなくゼイラル・ムーロンであったとのこと。
彼が国を出ると知った男は、手早く入念な準備をしてこの国へと来たらしい。
そして彼をつけた先で私に接触している事をしり、『ゼイラルが国を出てまで接触しようと思う人物を屠れば俺の恨みも晴れるっ!』と、実行の日まで野宿をし気を狙っていたらしい。
我が家の動物達が警戒して鳴かなかったのは、魔法を用いて姿を隠していたらしい。見えない者を警戒するとこはただの動物には無理であろう。
ただ入念な準備をした男だったが、この国で魔法を使い続ける事で魔力の枯渇を感じ、隙を狙うと言っていられないと、強硬実行に移したらしい。
そして運は彼に味方をし、絶好の隙が出来た。
『自分は一流だから運すらも味方につけた!』『魔力は枯渇に向かっているがこの分なら難なくやれる!』と侵入したらしい。
が、彼は我々の実力を侮り反撃されたのが結末だ。
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この国で使用した魔力は、魔法が使える国土よりも回復は鈍い。