282.推測か以心伝心か
夕食が済み一息ついた後、アリエスからそろそろ私を傷に触るため寝かせたいと言われ、帰るように促されたライラ達。
だが、私としては寝かせられても会話くらいまだ出来るぞ、と言ったのだが『…却下です』と若干の間を開け、ダメだと言われた。
私はん?と疑問を持った今のアリエスならほぼ即答で駄目だというはずだと。
何せ、夕食を取るためにベッドの端に座るという、アリエスの予定に無かったであろう姿勢をしていた。
無理をさせた後は強引にでも休ませると思っていたのだが、彼女はそれを渋るような返答をしてきたため、疑問に思った。
私の思い過ごしかとも考えたのだが…いや、なるほどな。
自分のこれまでの言動で、アリエスの返答があぁなった理由に見当がついた。
私はライラ達が去った後、アリエスの意図に返答してみた。
『報告のするための時間を取るために2人を返したのか?』
「…その通りです。先程、侵入した男が全て吐いたと報告を受け、食事後に時間を開けてほしいと言われました。
ロイ様が『明日までに説明出来るように』などという指示がなければ、喋れるまではお話をさせる気などありませんでした、ということをお伝えしておきます。ですので、くれぐれも長話なされないようにお願いいたします」
うむ。使用人達の優秀さには感心しかしないな。
だが私の代わりに長話をさせるアリエスには申し訳ないが、報告次第では次の指示や方針も考え伝えたいからな…
『善処はする』
「…本当は報告を聞くだけにしていただき、睡眠によって体力を回復して欲しかったのですが」
『アリエスがいるから喋ってはいないだろう?睡眠ならいつでもできる』
「報告を聞くこともいつでも出来ると進言しておきます。そして今ほどこの技術を持っていて後悔したことはごさいません」
『進言は受け取っておく。そして素晴らしい技術を持ったな』
「…ありがとうございます」
アリエスの不服であり嬉しそうな表情で言われた礼を最後に、多重会話終えた私達は報告をしてくる使用人を待つことにしたのだった。
この間にアリエスが『あぁ、食事に睡眠を促すための薬を混ぜておけば…』と、ボソッと言っていたのが少しだけ怖かったな。
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