270.その夜。双子は。
ロイヴァルッシュが侵入者と対峙した夜。
双子が感じていたことは――
――双子の心境視点。
その夜。
ライラとレイラは久々に仲良くベットで眠っていた。
これはレイラが『たまにはいいでしょ?お兄ちゃん?』と、ライラが1番呼ばれたくない呼び方でねだられた。
一緒に寝てくれなきゃ呼び続けるわ。と強かにいうレイラにライラは心の強さはとうさんに似てきたかも、と思いつつも、共に眠ることを承諾した。
しかし眠っていた所を緊迫した様子の使用人に起こされ、家の中に侵入者が入ったかもしれないと言われた。
不安になったが、侵入者がここに入ってきたとしても、ベランダに向かって騒ぎ時間を稼げば、近くにいる『ロイヴァルッシュ』が助けに来てくれる、もしくは誰かを呼んできて対処してくれると思っていたからだ。
だが、それはロイヴァルッシュの部屋から聞こえた、何が壊れるような激しい音で、双子の心は不安一色に染まった。
ロイヴァルッシュなら自室に侵入者がいたとしても、物すら壊させずに侵入者を捕らえるはずなのに。
なのにどうして。どうして。
これはロイヴァルッシュにも、誰にも話してしない双子しか知らぬ話。
幼き日。両親が不在で悲しかった。
使用人だった者達から励まされたが、悲しみは説明できない…ただただ不安で早く両親に会いたいという気持ちが募り、双子は起きている間ずっと泣いていた。
いま思えば、両親の死相を感じ取っていたのかもしれない。
その日から両親が亡くなったのだと分からず、住む家が変わり、いつの間にか親代わりとなっていたロイヴァルッシュのもと、暮らしてきた。
成長したと見極められた時に、両親が亡くなったことを告げられ悲しくはあったが、常に『ちち』と慕い呼び、時に『はは』と呼ぶ生活は、双子の身に染み付いていたため、今育ててくれているロイヴァルッシュをこのまま『親』として仰ぎ続ける。
この思いを双子はそれぞれの言葉で伝えた。
それを聞いたロイヴァルッシュの困惑したような表情と、その時あった話を双子は鮮明に覚えている。
『親として慕われ続けるとは思っていなかった。本当の親は姉夫婦だったからな。
だが嬉しい。心の片隅で、この歳で子だと胸を張れないと思っていたのだが、2人が『親』だと言ってくれるなら、2人に恥じない親となろう』と。
鮮明に覚えていたのは、ロイヴァルッシュの年齢を聞いたから。自分達と5、6歳しか違わなかったのだ。
…両親の死を感じ取っていた時のような感覚。それを双子は感じ、言葉には出さなくもと『あの時の感覚だ』と伝えあった2人は、自然と涙を流しだした。
『親』がまた自分達を置いていなくなるのかもしれない、と。自分達は今も昔も守られているだけで何も出来ない。
出来たとしても、ロイヴァルッシュの邪魔になるかもしれない。
いや。
いつもの自分達なら、役立つために動けるのに…と。
負の感情が入り交じり、部屋の外からロイヴァルッシュの無事が伝えられ、その瞳に移すまで、ロイヴァルッシュの声を聞くまで不安は拭えなかった――。
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